花霞が消えるまで:完結

第一章 想いは人であるがまま
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『想いは人であるがまま』



甲府から逃れて、俺は毎日のように近藤さんの助命嘆願に走り回った。
だが結果は芳しいモノじゃなく、無為に時間だけが過ぎて行った。
新政府軍にとって新選組は旧幕府軍の象徴とも言える存在。
その局長である近藤さんの安否と、先の見えない焦燥が俺を苛立たせていた。
そんな俺が辛うじて正気を保っていられるのは、一重にこいつのおかげかもしれない。
「お疲れ様です、土方さん。」
静かに俺に寄り添って、疲れた俺を少しでも癒そうと、少しでも力になりたいと穏やかな笑顔を向けてくる。
「千鶴、いつも言ってるだろう。毎日俺の帰りを待ってなくていいんだよ。お前は俺と違って体力もねぇし、羅刹でもねぇんだから夜起きてるのは辛いだろう?」
俺がこう言うと、決まってお前は同じ台詞を返してくるんだ。
「大丈夫ですよ、こう見えても体力だけは自信があるんです。」
少しでもお役に立ちたいんです。
何を根拠に言ってんだと呆れる俺に、いつもの台詞と共に熱い茶を差し出してくれる。
初めに比べりゃ随分美味く入れられるようになったなと味わいながら、ゆっくり茶を啜った。
思えば俺は、この頃からお前に囚われていたのかもしれない。



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