1/1ページ目 『閉じた世界』 「……別れたい?」 酷く傷付いた様子の千鶴君の言葉に、俺は今言われた言葉を繰り返した。 「…はい」 君は知らないかも知れないが、俺はもう君がいないと生きていけないのに、何故そんなことを言うんだ。 どうして、君は俺を捨てるんだ。俺はここまで、君を愛しているのに!そう叫びたかったのに、中途半端な理性がそれを制止した。 「……理由を、理由を聞いても構わないか。俺には……、聞く権利がある筈だ」 悲鳴にも似た叫びの代わりに俺の口が出した言葉は、自分でも驚くほど絶望に震え、泣きそうに擦れていた。 「……言えません」 泣きそうな声に、俺の方が泣きたいと言いたかった。 どうして俺を捨てる君が泣くんだ、泣くなら俺の方じゃないのか。 恨み言にも似た気持ちを彼女に言う訳にもいかず、俺はただ手を握り締めていた。 「では、質問を変えよう。俺のどこが気に食わないんだ」 すぐに直すから言ってくれ。俺は君がいてくれたら、それでいいんだ。 自分を変えることなど、君を失う痛みと比べたら大したことはない。だから、頼む。 「そんな!山崎先輩が気に食わないなんて有り得ません!!」 「それならっ!!」 千鶴君の肩に手を置いて、睨むように見詰める。千鶴君が怯えているが、俺には余裕なんてないんだ。 「それならどうして、俺と別れようなんて言うんだ!!」 直すようなところがないなら、嫌うところがないならどうして!俺は、千鶴君の肩を掴む手に力を込めた。 「私、先輩のことが好きなんです。好きで好きで…これ以上好きになると、もう先輩なしじゃ生きていけなくなりそうで……。それが、それが本当に…」 怖いんです、そう繰り返して、自分の身体を抱き締める千鶴君に、俺は言葉を失った。 「だからもう、終わりにしましょう?私から、もう自由になってくださ、いっ!?」 「千鶴君、君はそんな嬉しいことを言われて、俺が易々と君を手放すのだと、本気で思っているのか」 だったら、見当違いも甚だしいな。好きだから離れようなんて、俺からしたら愚行だ。好きなら、一緒にいればいいだろう。 「……俺はもう、君がいないと生きていけないんだ」 耳元で囁くように言えば、千鶴君は息を詰まらせて俺を見た。君が二度と俺から離れないよう、俺が誘惑してやろう。 「なあ千鶴君、俺と一緒に堕ちてくれ」 (二人がいれば世界なんて要らないだろう?) fin 皆人さん、ありがとうございました! [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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