ビタミンシリーズ

ビタZ:キヨユリ
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そんな〜だったのだ。
まさか、本当に目を覚まさなくなるなんて・・・。
「ね、ねぇ清春君。フザケてるだけでしょ?ねぇ、ホントは起きてるんでしょ?」
朝起きて、いつものように顔を洗って、もう出掛ける時間になっても清春君は目を覚まさなかった。
昨夜かなり夜更かししてたから、そのせいで寝坊してるんだとそうだと思っていたけど・・・。
「まさか、ホントに私の作ったお弁当のせい?あれで、もしかして・・・死んじゃったとか・・・。」
よく確かめてみれば心臓も脈拍もしっかりしてるのに、その時の私はかなり動転していてそれ所じゃなかった。
叩いても抓っても、どうしたって目を開けない清春君に不安が募っていくばかり。
「ねぇ、起きてよ。起きてってば!」
ゆさゆさ肩を揺すっても全く起きる気配はなく、私はもしもの悪い予感に胸が締め付けられるようだった。
もし、このまま目を覚まさなかったら?
もう、二度と清春君の声も聞けなくなったら。
悪戯をしては私をからかってばかりで、ちっとも素直じゃなくて、でも憎めなくて、子供みたいだけど私にとってはたった一人の・・・。
「清春君、起きてよ。ねぇ起きて!お願いだから、何でもするから、お願い。・・・起きてよ・・・。」
怖くて怖くて、不安に目の前が真っ黒になった。
堪え切れずにポロポロ泣き出した、まさにその時。
「く・・・。」
「・・・きよ・・・はるくん・・・?」
「くっくくく!ぶは〜〜はっはっは!!」
「・・・・!!!??」
「最っ高!ぶぁ〜〜か!オレっ様がブチャの手料理なんかでどうにかなる訳ねぇだろぉ?おっ前の顔!!」
「だ、騙したのっ!!?」
「な〜んの事かなぁ?オレ様はただ寝てただけだぜぇ?」
「ひ・・・ひどっ!!」
本気で心配したのに!!ホントに、二度と目を覚まさないんじゃないかって!
それが清春君の悪戯だと判って、嬉しいけれど悔しくて憎たらしくて素直に喜んでなんかあげれなくて、私は爆笑を続ける清春君に背を向けて今度は嬉しくて流れる涙を必死に我慢した。
ティッシュで流れる涙を押さえる私の背中に、いきなりズンっと重みが圧し掛かる。
「ブ〜チャ。何だよ、そんっなにオレ様に起きて欲しかったのかよ?」
「べ、別にそんなんじゃないわよ!」
「へぇ〜〜?じゃあ、本当に起きなくても良かったって訳ぇ?」
「・・・!!」
カラカラと尚も笑いながらそんな事を言う清春君に本当に腹が立った私は、背中に掛かった重みを振り払って思い切り清春君の胸を叩いた。
「って!てめぇ、ブチャ!!何す・・・!」
「ふ・・・っホントに・・・目を覚まさないかと・・・!」
ドンドンと何度も胸を叩きながら泣く私を、清春君は呆気に取られて見下ろしている。
いつもならここで何か悪さをして来そうなのに、何も言わず何も反撃もせず、ただ胸を叩きながら泣き続ける私を見下ろす清春君は、もしかしたら少しだけ反省しているのかもしれなかった。
その証拠に、暫くすると私は彼の大きな胸の中に閉じ込められて苦しい程に抱き締められていたから。
「ぶぁっかじゃねぇの?オレ様が悠里を放っとく訳ねぇだろが!こ〜んな面白ぇ玩具、放っとく手はねぇっての。」
「一人に、しない?」
「しねぇよ〜〜。っつぅかぁ、お前が離れたいっつっても離さねぇしぃ?
だいたい、そぉんなボロッボロ泣いてブチャが益々ブチャイクになった悠里を、オレ様以外のだ〜れが拾ってくれっと思ってんだよ?キシシシ。」
酷い言い様だけど、直訳すれば『一人にしねぇよ』って言ってくれてるのが判ったから、私はやっと安心して清春君の胸に顔を埋めた。
本当に、朝から心臓に悪いったら無い。
けど仕方無い。そう言う彼を、私は好きになっちゃったんだもの。
「そう言えば、オレ様が起きたら何でもする〜とか、言ってたっけ?」
「・・・え?」
「確かに言ったよなぁ?何でもするって。」
「・・・え・・・?」
「んじゃ、早速『何でも』して貰っちゃおうか?」
「・・・え・・・??」
「覚悟しろよ?ブ〜チャ?」
「え・・・・えぇぇぇぇ〜〜〜!!!」

その日、私が学校に遅刻したのは言うまでもなかったりする。




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