風雲!壬生学園陰道中

32話 学園祭・三日目
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「かっわいいいいいい!!!」
「へ、平助君・・・!!」
着替え終えて教室に戻る時から、擦れ違う生徒(中には教師も)の視線に居た堪れなくて縮こまってドアを開けた私を出迎えたのはそんな平助君の第一声だった。
「可愛い可愛い!やっぱすっげぇ似合ってる!超可愛いな、ナース服!!!」
「確かに、似合っている。折角なのだからもっと堂々と胸を張っていればいい」
「いや、無理だよ、斎藤君」
「そんな事はないだろう?恥ずかしがっているとそこに付け込んで余計な虫が寄ってくるぞ」
「余計な虫・・・!?」
可愛いを連呼する平助君に、無表情なのに何故かほんのり頬を染めた斎藤君。
二人して何言ってるんだろうと思ってたら、後ろから教室に入って来た山崎君まで不吉な事を言ってくれる。
「よ、余計な虫・・・て・・・」
「忘れたのか?初日にあれ程スタンプカードが売れた理由を?」
「理由って、だってあれは景品が豪華だったからで、僕のせいじゃないよ?」
いかにも僕のおかげと言わんばかりの三人の視線が刺さる。
たった二日前の事なに凄く昔の記憶だし、当日かなりの勢いで追い掛けられまくったけど、私の功績なんじゃないと思う。
それを口にしたら、何故か深く溜息を吐く三人。
何だろう、この『駄目だ、こいつ』的な溜息・・・。
「判ってねぇな、千鶴は!こぉんな可愛い看護婦さんがいたら仮病のヤツが大量に押し掛けるに決まってんじゃん!」
「確かに、体育祭と言う怪我と隣り合わせでもある行事。怪我にかこつけ不埒な行いをする者が出るだろう」
「だが、心配はいらない雪村君。俺達が決して君を危険な目には合わせない」
「当たり前だ、俺が団長やってんだ。何があってもうちの組のモンに手は出させねぇ」
「うぎゃ!?ひじ、土方さん・・・!心臓に悪いから背後からいきなり登場しないで下さい!!」
ここの人達微妙に気配消してる事が多いんだもん!
物凄く心臓に悪い!
しかも『うちの組のモン』って、どこの任侠組織ですか!?
「てめぇ・・・仮にも団長に向かって「うぎゃ!」てなどう言うこった・・・」
「あ、いや、そうじゃなくてですね、一昨日から僕のキャパは一杯一杯なんです!これ以上驚かせないで下さい、ホントに!!」
これはただの言い訳じゃなく、ホントの事。
校内発表で追い掛けまくられ、ステージ発表では子供染みた嫌がらせを受け、準備段階から・・・いや、この学園に転入してきた頃から、環境に慣れるだけで精一杯。
周囲に流されるだけの毎日な気がして結局父様を探す事も出来ないし、行方を知ってるらしい風間さんともあれ以来話せていない。
焦る僕だけ置いて勝手に盛り上がる周りに、着いてくだけ精一杯でどうにも出来てない。
楽しそうだと思うし楽しいけど、それ処じゃないって言うか・・・。
「まぁ・・・心配するな。お前の事はちゃんと守ってやる。だから安心してろ」
くしゃりと髪を撫でる土方さんは、自信満々に笑ってる。
他の皆も同意するように頷いてるけど、私は安心するよりそこまで危機感を抱く必要がある体育祭に、かなり不安になった。



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