1/2ページ目 その日私は、いつも帰るアパートではなく水塚の屋敷へと足を向けた。 元々住んでいた屋敷を転校と共に飛び出し一人暮らしを始めたのは、一度は経験してみたかったというのもあるけれど、少し水塚に縛られた生活から離れたかったせいもある。 その事をよく知っている千姫も君菊さんも、何の前触れも無く帰った私にかなり驚いたようだった。 「お帰り!千鶴ちゃん!!急にどうしたの?あ、勿論帰って来てくれたのは嬉しいよ!」 笑顔で出迎えてくれた千姫と君菊さんに、私も笑顔で答える。 「ごめんね、急に。ちょっとお千ちゃんの顔が見たかったのと、これ渡したくって。」 鞄から取り出して渡したのは学園祭の招待券。父さんが居ない今、私の身内は千姫一人きり。 あの衣装を着た自分を見られるのは少し恥ずかしくもあるけれど、彼女には私が学園生活を少しでも楽しんでいる所を見て欲しかった。 「これって学園祭の?招待してくれるのね。嬉しいわ、ありがとう。」 「ううん、ちゃんとお千ちゃんには観て欲しいから。ただ、驚かないでね?私ちょっと変わった格好してると思うけど・・・。」 「変わった格好?」 「うん、ステージでもクラスでも、体育祭でも、ちょっと・・・クジ運悪かったみたいで・・・。」 「ああ、そう言えば今年は千鶴様になったんでしたね、例の役は。」 「何?例のって。」 「実はですね・・・。」 何故だか声を潜めて君菊さんが千姫に説明する間、私は手持ち無沙汰で久しぶりに入る千姫の部屋をウロウロしていた。 彼女の部屋は大富豪な割に狭くて質素だと思う。無闇に高価なモノを置かず、趣味のいい調度品と私や君菊さんから送られた可愛い置物と写真が飾ってある程度。 私はその中の一枚。千姫と、君菊さんと私と、そして父さんの写った写真を眺めていた。 「何ですって!?千鶴ちゃんがそんな格好をっ・・・!!」 あ、もしかしてヤバかったかな。そんな格好許しません!とか言われちゃったらどうしようと頭を悩ます私に、千姫は高らかに告げた。 「私の可愛い千鶴ちゃんがそんな中途半端な格好許せないわっ!衣装ってどれ!?これ!!?任せて!私が学園中で一番可愛くて一番可憐な衣装に作り直して上げるから!」 「え!?いや、あのそれって皆とお揃いだから下手に改造出来ないの!気持ちは嬉しいけどっ!」 「大丈夫よ!元のデザインはそのまま使うから心配要らないわ!」 腰に手を当てて瞳を輝かせ張り切る千姫を、止める勇気は私には無かった・・・。 ほぼ無理矢理衣装を奪われた私は、小さく苦笑しながらさっき見ていた写真にもう一度視線を移した。 「ねぇ、お千ちゃん。」 「ん?何、千鶴ちゃん。」 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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