1/1ページ目 転入初日が無事終わり、放課後になると、平助君と斉藤君が校内を案内してくれると言う。 校内の事が全く判らない私は、ありがたくその申し出を受け入れた。 「さて、まずはあんたはどこから見たいんだ。」 「そりゃ食堂だろう!?腹が減ってちゃ戦は出来ねぇ!」 このご時勢に戦もないけど、ある意味私的な戦いは始まってるかもしれない・・・。 「そう・・・ですね、うん。食堂とか保健室とか、教えてもらえますか?移動教室はその都度でいいから。」 「判った。こちらだ。着いて来い。」 まるきり表情を変えずに先導する斎藤君に慌てて着いて行く。 「向こうに行ったら三年の学年棟でぇ、向かい側が一年な。職員棟は三年棟の一階なんだ。だから保健室は三年棟にあるって訳。」 無言で案内してくれる斎藤君とは逆に、ずっと喋りながら隣を歩く平助君は何故か凄く楽しそうだ。 何がそんなに楽しいんだろう? 不思議に思った私は疑問をそのまま口にした。 「平助君、何だか機嫌いい?」 「あ、やっぱ判る?俺さ、こうやって誰かに校内案内とかすんの初めてでさ!すっげぇ新鮮ってか楽しみなんだよなぁ。」 「そうなんだ?じゃあ、記念すべき初案内って訳だね。よろしくね、平助君。」 「お?おお!」 にっこり満面の笑みを浮かべて、平助君は照れ臭そうに赤くなった。 「藤堂さん、公衆の面前で男相手に頬を染めるのはどうかと思います。」 「五月蝿いよ烝君!いいじゃん別に、どうせ男ばっかなんだし!」 男だらけだからこその助言なんだと思うけど・・・それにしても山崎君は同級生相手でも敬語なんだ。少し変わってるかな。 そんな事を思いながら彼に目をやれば、山崎君は物問いた気な視線を私に向けていた。 深く澄んだ瞳はどこまでも見透かされそうで、正体がバレた訳でもないのにドキドキしてしまう。 「そうですね、男だらけだからこそ、見た目に変とも言いますが。」 え・・・と、バレて・・・ないよね? 私が不安に思っているのを知ってか知らずか、斎藤君が振り返って冷たい一言を投げてくる。 「男子校で何を不毛な事を言っている。雪村、ここが食堂だ。」 「あ、ありがとう。って・・・う・・・わぁ・・・。」 案内された其処は、食堂と言うより最早レストランに近かった。 広い広間に大きなキッチンでは多くの人がいい匂いのする料理を作っている。 好きな物を好きなだけ取るバイキング方式で、支払いは此処の学費に追加されるよう生徒カードでチェックしているようだ。 「あ〜何か腹減って来た〜。」 「・・・平助、まだ二時限が終わったばかりだ。」 「減ったもんは減ったんだよ!何か食ってこ〜かなぁ〜。」 「時間あるの?休憩時間になってから結構経つけど・・・。」 「え、マジで!?あ〜〜・・・次はぁ・・・。」 「数学だ。」 「って事は天霧センセか!じゃあ、ちょっと遅れても平気だな!」 「え!?本気で遅刻していくの?」 「天霧センセなら平気だって!」 「何が平気なのですか?藤堂君。」 私が驚く横から、にゅっと黒い腕が伸びたかと思うと平助君の頭をワシっと掴んでぐりんと横向きにした。 「げ・・・天霧センセ・・・!」 「私の授業に遅刻しようとはいい度胸ですね。それに免じて藤堂君には特別に補習授業をしてあげましょう。」 「え”〜〜〜〜!!!」 「自業自得だな。」 「部長には俺から伝えておきます。」 「お前等薄情過ぎだ!千鶴!お前は一緒に補習受けるよな!な!?」 「え・・・・え〜と・・・。」 「君が転入生の雪村君か。君菊先生より若干説明は聞いている。大変だろうが、頑張りなさい。」 「あ・・・ありがとうございます!!」 微かに笑みを浮かべて天霧先生は去って行ったけど、私には一つ問題が残った。 「なぁなぁ〜千鶴って!補習〜〜〜。」 「雪村、付き合う必要は無い。」 「そうですね、貴重な放課後を割く程ではないと思います。」 「補習〜〜〜!!」 補習補習と纏わり付く平助君に苦笑いを返しながら、私は天霧先生の優しそうな笑顔を思い出した。 少しだけ、頼もしい味方が出来たなと勇気付けられながら。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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