風雲!壬生学園陰道中

夏合宿編
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絶景・・・とはこういうのを言うのだろうか。
宮島・松原・天橋立。
日本三景の内の一つ、天橋立が、見渡す海原の向こうにくっきりと見える。
そして周りに広がる緑と青い空。
それがぐるりと360℃に渡って見下ろせる様は、確かに疲れも吹き飛ぶ程壮大だった。
「1010段・・・駆け上がる価値はありますね。」
「だろう?俺もこの景色が好きでな。毎年楽しみなんだ。ま、今年で終わりだがな。」
「あ、そっか。三年は、次の新人戦で引退なんですね。」
「そう。やっと土方さんの鬼のシゴキから解放されるって訳。でも、千鶴ちゃんと会う機会が減るのは残念だけどね。」
軽くウィンクしながら沖田さんは私に抱き付いてくる。
常々思うけど、やっぱりこの人にもバレてるんだろうか?
「だぁ〜!!やっと着いた〜〜!!」
斉藤君、山崎君。そして平助君が辿り着き、他の部員もゾクゾクと上ってきた。
「千鶴やっぱはえぇ〜〜!すっげぇ悔しいんだけど!!」
「日々の鍛錬を怠るからだ。」
「そうですね、藤堂さんはもう少し持久力をつけるべきです。」
あの階段を駆け上がった割りに息も乱れていない二人は、へたり込む平助君に水分を渡しながらも嬉しそうだ。
何だかんだ言ってこの三人は仲が良いなと羨ましくなる。
「あちぃ〜〜!!千鶴、よくそんな格好で平気だな!」
「平気って訳じゃないけど、仕方無いからね。」
「アレルギーだったか?顔はもっと隠さなくて平気なのか?」
「顔は普段から紫外線に触れてますから、免疫が少しはあるんです。でも腕や足は・・・。」
「ふ〜ん?大変だね。それじゃ恒例の湖で水浴びも出来ないし、水泳競争にも参加出来ないんだ。」
「そう言う事に・・・。」
湖で水遊び・・・。
内心物凄く参加したかったけど、紫外線アレルギーがあるからと理由を付けて肌を晒さずにいる現状では、それは無理な話だった。
まさか女の私が皆と一緒に水遊びなんか出来る訳がない。
昨夜も平助君に一緒にお風呂に誘われてかなり困ったしな。
ただ、それに関しては左之先生がさり気無くフォローしてくれて助かったんだけど・・・。
何だかんだと理由をつけて千姫から合宿への参加許可を貰ったけれど、その条件は絶対必要以上に馴れ合わない事。
女だとバレない為に必要ではあるけれど、どこか一歩距離を置いて接するのは少なからず心苦しかった。
結局あれ以来先生とゆっくり話す機会が持てず、何故とか何時からとか詳しい話は聞けないでいる。
一つ判っているのは、先生は私が女だとバラすつもりはないと言う事。
そして色々誤魔化さなくてはならない私の助けになってくれている事。
薄っすら笑みを浮かべて景色を眺める先生を見ていると、ふっとこちらに視線を移した先生と目が合った。
途端いつもの柔らかい笑顔を浮かべ、私の頭をポンっと優しく撫でてくれる。
「綺麗だろ?」
「・・・はい、綺麗・・・です。」
綺麗なのは、先生ですよと、こっそり思いながら、頭に置かれた手の重みに少し動悸が早くなったのは何故なんだろう。
山から吹き上げる風は、優しく頬を撫でて穏やかな時間をもたらしてくれたのだった。



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