風雲!壬生学園陰道中

副部長と副顧問
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「雪村、雪村千鶴?・・・欠席か?おい、斎藤。」
「・・・雪村は体調が優れず保健室に行きました。」
「保健室?・・・そんな報告は受けてねぇが・・・まぁいい。授業始めんぞ。」
左之は不審に思いながらも授業を進め、チャイムの音と共に教室を後にした。
(どうも・・・あいつ等おかしかったな。何かやりやがったか?)
考え事をしながら教科室の前まで来ると、部屋の前に佇む生徒が一人。
「遅かったですね、原田先生。」
「山南。珍しいな、お前が俺んとこに足を運ぶなんて。」
「私も来たくて来た訳ではありません。4時限目に教室に資料を忘れて行ったのは貴方でしょう。」
「そうだったか?わりぃわりぃ。今開ける。」
山南敬助。剣道部副部長にして風紀委員副委員長を務める品行方正を絵に描いたような人柄も人望も厚い生徒。
・・・だった。
数ヶ月前に左腕を怪我するまでは。
帰宅途中、車に轢かれそうになった猫を助ける為、自らが車に轢かれてしまった。
命に別状はない怪我だったが左腕のみ神経まで傷つき、剣士として命とも言うべき左腕の自由を奪われた。
表面的な傷はすぐに回復したが、失った左腕の自由は、土方に継ぐ実力の持ち主として全国に名を轟かせていた山南から、全ての自信をも奪ってしまった。
それ以来、いつも穏やかだった笑顔は形を潜め、常に自嘲気味な表情をするようになってしまった山南に、左之も常に気を配るようになった。
だがそれは、怪我のせいでどう対応していいか困惑する面々が、更に彼から距離を置く理由としては充分だった。
今も暗い表情を浮かべる山南に、左之は複雑な思いで鍵を開けた。
「・・・・。」
「・・・原田先生。ここはいつから託児所になったんですか?」
「いや・・・託児所って・・・。」
誰も居ない筈の教科室。教員用にしては些か座り心地のいいソファに雪村千鶴がスヤスヤと眠っていた。

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