1/2ページ目 山崎がそこに辿り着いた時、辺りは鉄と濁った空気に充満されていた。 白かった筈の布団は真っ赤に染まり、その上に蹲るように座り込む人物が誰か始めは解らなかった。 だが長い前髪に隠れた瞳が光を失わず、むしろこちらを射殺す強さで見返した事でそれが一番組組長その人であると知れた。 「沖田さん?」 「あれ?千鶴と沖田以外は招待してない筈だけど?困るな、勝手に舞台に上がってもらっちゃ」 訝し気に上げた声に対し応えたのは部屋の奥、山崎の立つ位置からは影となる場所に立つ男だった。 しかしその顔を認めた瞬間山崎の息が止まる。 と同時、その腕が掴む細い首に一瞬で我を忘れ飛びかかった。 「貴様・・・っ!!」 「!!?」 ザクリと斬り付けた腕。 真っ赤な血飛沫と共に千鶴を離した男の歪めた顔と、腕の中に抱き止めた少女の顔を見比べ困惑に眉を顰めた。 あまりに似通ったその造形に、信じられないとでも言うように。 些か青褪めた頬と、真っ直ぐ男を見つめる瞳にほっと止めた息を吐き出す程似ていた。 だがそれはあくまで造形のみに限った事で、いつぞやに藤堂が言っていた千鶴似の女とはこの男の事かと合点がいく。 (言う程似てないじゃないか) 見た瞬間狼狽した自分を恥じ、改めて見返す男は口元に嘲笑を、目には敵意を浮かべこちらを観察している。 「困るのはこちらだ。ここは新選組が拠点を置く屯所。外にいる鬼と言い貴様と言い、招待もされず面の顔の厚い事だな」 「はっ!新選組の拠点、確かにここに部外者は入り難かったな。けど、それならそこに居る女はどうなんだ?俺の可愛い妹をこんな穢らわしい場所に繋ぎ止めて、そっちこそ面の皮が厚いだろ」 「妹・・・?」 なるほど、兄妹。 ならばこれ程似通っているのも道理。 しかも彼女の様子からして今までその存在を認識してはいなかったのだろう。 どんな半生を送ってきたか知らないが、千鶴と違い随分と荒んだ道だったようだ。 光を宿す瞳に色濃く見え隠れする影がそれを物語っている。 「山崎君、こいつは僕の獲物なんだからさ、後から来て横取りとか止めてくれるかな」 「とは言っても、今の沖田さんに戦う力が残っていますか?」 「馬鹿にするな!僕は戦える!もう僕は戦えるんだ!!」 「沖田さん・・・?」 この部屋に辿り着いた時と同じ声音で問い掛けた山崎に、沖田は目の前の男と変わらない笑みを貼り付けゆらりと立ち上がる。 血に濡れた口元を乱暴に拭い構える姿に危なげな気配はない。 昨日までは確かに病に伏せり立つ事も危うかった筈なのに? 「山崎さん、沖田さんは・・・お、変若水、を・・・」 「変若水っ!?まさか、飲んだんですか!?」 千鶴の言葉に山崎の目が驚愕に見開かれ、太刀を構える沖田に詰めよらせた。 それを一瞥した沖田は五月蠅そうに眉を顰めなんでもないと手を振り笑う。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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