2/3ページ目 そのまま口付けようとする山崎を小さな手が押し退けた。呆気に取られる千鶴の前で、晋は手を広げて山崎を牽制した。 「ちちさま!ははさまにちゅ〜はらめ!ははさまにちゅ〜していいのはぼくらけ!」 「・・・千鶴・・・とりあえず母にべったりな甘えん坊を何とかしてくれ・・・。」 「ふ・・・ふふふ!烝さんが負けちゃう処なんて、滅多に見れないですよね!」 楽しそうに笑う千鶴とは対称に、山崎は複雑な表情で我が子を見下ろす。 晋が二人の邪魔をするのは今に始まった事ではないが、二人が仲睦まじく寄り添っていると必ずと言っていい程割り込んで来る。 おかげで愛しい千鶴に触れたくても、口付けすら侭ならない山崎は少々欲求不満気味・・・。 「さぁ今日はお散歩に行きましょう?お日様が凄く元気ですよ。」 「は〜い!」 にこにこ微笑む妻と上機嫌な息子と、苦笑いの旦那様は三人手を繋いで山への道を歩く。 休みの日のお約束のような行事だが、ここでも晋は母にべったり離れない。 当然繋いだ手も間に晋が陣取り山崎は千鶴に触れる事は叶わない。 「晋は実はあの男の生まれ変わりじゃないか?でなくてはこうまで俺の邪魔をする理由が解せん。」 「うわ・・・烝さん嫌な事言わないで下さいよ。私が産んだんですよ?」 「・・・そうだな。自分でも少し嫌な想像だった。では、ただの母親好きか?あの歳頃の童子の事はさっぱり判らない。」 晋が野の花々に夢中になっている隙に、千鶴の肩を抱き寄せながら眉を顰める山崎に、千鶴は声を上げて笑う。 「何が可笑しい?」 「だって、晋に焼き餅妬く烝さんって・・・何だか可愛いです。」 「・・・可愛いのは君だろう。全く、人の気も知らないで・・・。」 溜息を吐きつつ、やっと本日最初の口付けを交せた山崎は満足そうだ。が、それも束の間小さな恋敵がすっ飛んで来て二人に割り込む。 「ちちさま、ははさまのひとりじめはらめ!」 「・・・お前もな・・・。」 バチバチと火花を散らす父子を千鶴はいつも幸せそうに見守りながら一日は過ぎて行く。 そうして毎日恒例の喧騒は、夕餉の後、風呂の前に毎回起きる。 「やら!ははさまと!」 「だが、たまには父と入ってくれてもいいだろう?」 「や〜ら〜。ははさまと!」 「・・・・千鶴。今日も俺とは入ってくれないようだ。」 「あ・・・はは。どうしてでしょうねぇ?」 「恐らく俺と入るのが嫌なのではなく、君と入りたいだけだろう。俺も久しく君と風呂で背中を流し合っていないな。」 「ごめんなさい。だって・・・晋を寝かしつけてると、起きてようと思っても寝ちゃうんです・・・。」 「構わない。家事と育児と合間に俺の手伝いまでしているんだ。疲れていない方がおかしい。 ・・・たまに、俺が無理に起こす事もあるからな。」 にやりと笑う山崎に、千鶴の頬が一気に染まる。 「すぐに赤くなるのは変わらない。相変わらず・・・・。」 「面白い、ですか。」 「くく・・・よく判っているな。・・・ああ、早く晋を風呂に入れないと、もう眠そうだ。」 「あ、晋!まだ寝ちゃ駄目!お風呂に入ってからですよ!」 バタバタと晋を風呂に入れると、そのまま千鶴は晋を寝かし付けに寝屋に入る。 その合間に山崎は明日の仕事の準備を整えてから風呂に入るのだ。 他の家ではどうか知らないが、それが山崎家の日常。 平穏で、平凡な、けれど何にも替え難い幸せな毎日。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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