Moments番外編

C君に捧げる夢☆
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「ちょいとお待ち!烝!」
「・・・何か?キヨさん。」
「何か?・・・じゃないよ、この甲斐性無し!」
「か、甲斐性無し!?」
「そうだよ、この馬鹿は!一体いつになったらあんた達の赤を取り上げさせてくれるんだい!
このままじゃあたしの方が先にぽっくり逝っちまうじゃないか!」
「・・・・。」
とあるお休みの日。
私達は久しぶりに二人揃って町に下りて来ていた。
そこでいつもお世話になっている問屋のおキヨさんに、いきなり烝さんが呼び止められてバシバシ背中を叩かれながら冒頭のような暴言を吐かれたのだ。
「あの、お久しぶりです、おキヨさん。」
「千鶴!あんたも昼間だろうが何だろうが関係なく烝を閨に引っ張り込んで突っ込ませなきゃ駄目だろう!?」
「つ・・・突っ込ませ・・・・!!??」
「烝!あんたは医者だろ!どうすりゃ子が早く出来るか研究して毎晩励みゃすぐに出来るんじゃないのかい!」
「キ・・・キヨさん・・・・。」
随分前から、私達に子が出来たら自分が取り上げると大張り切りのキヨさん。
なのに半年経っても全く私に懐妊の気配が見えない事にご立腹らしい。
それにしても、どういう発破の掛け方なんだろう・・・。
「くっ・・・この・・・妖怪ぬらりひょんめっ・・・!」
いつも冷静なさすがの烝さんも、小さく悪態を吐く程のおキヨさんの言動に私も苦笑を洩らすしかない。
「誰がぬらりひょんだい!どうせなら砂掻けババァ位言ってみな!目上のもんは敬うもんだよ!」
((妖怪な所は否定しないんだ・・・。))
変な所に頬を膨らますキヨさんはなかなか私達を解放してくれず、それからも延々小言を言われ続けていた。
そこへ通りの方から歓声が上がる。
「・・・?キヨさん、今日は何かあるんですか?」
「ん?ああ、今日は鳶の将太が嫁を貰ったんだ。千鶴も見といで、あのションベン小僧に不似合いな別嬪な嫁さんだよ。」
「はい!烝さん、行きましょう!」
私が烝さんの手を取って外に行こうとすると、キヨさんが彼だけを呼び止めた。
「ちょいと待ちな、烝は残るんだよ。話があるからね。」
「話し・・・。」
さっきまで散々小言を聞いていた気が・・・。
「何か文句でもあるのかいっ!?」
「・・・いえ、ありません・・・。」
烝さんは覚悟を決めたように再び座り直し、私は申し訳なく思いながらもお嫁さんを見に外に出た。
将太さんのお嫁さんは本当に綺麗で、真っ白な白無垢がよく映えていた。
私は皆に混じってお祝いの声を掛けながら、少しだけ羨ましい、なんて思ってしまった。
お嫁さんをうっとり見送る私の隣に烝さんが立った事に気付かない程度には・・・。
「随分熱心に見ていたな。其れ程綺麗だったのか?」
「え!?あ・・・!す、烝さん!すみません、ちょっとぼう〜っとしてました!」
「・・・まぁ、いい。それよりすまない。先に帰ってくれないか?」
「え・・・私一人で?」
「ああ、少々厄介な仕事が出来た。折角の休みにすまない。」
キヨさんから急な用事を言いつけられるのはいつもの事なので、私は仕方なく頷くと一人帰路に着いた。


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