1/5ページ目 京から遠く離れた東北の地。 東の鬼の里に二人が辿り着いてから一月程。 羅刹となった山崎と鬼である千鶴は、誰に祝福されるでなく二人だけの祝言を挙げた。 小さな家で、お互い盃を交わしただけの祝言だったが、何か形にする事で二人が夫婦(めおと)になれたのだと実感できた。 「本当に、良かったのか?俺が雪村を名乗ってもいいんだぞ?」 「いいえ、雪村は既に絶えた一族ですし、それに・・・。鬼の名を、いつか産まれるかもしれない子供達に継がせたくはないんです。」 「・・・そうか。」 「はい、ですから、私は今日から山崎千鶴です。どうぞ、よろしくお願いしますね、旦那様。」 「ああ・・・こちらこそ、よろしく頼む。」 祝言を終えた夜。世に言う”初夜”を迎えた二人。 交わす言葉はさり気無くはあったが、それでもどこかぎこちないのはお互いを意識しての事だろうか。 身を清め一つ布団に二つ並べた枕を間に正座したまま既に四半刻・・・。 「千鶴・・・。」 「はっはいぃっ!!」 静かに名を呼ぶ山崎に対し、妙に上擦った声を上げた千鶴は弾かれた様に顔を上げた。 「・・・何だ、その妙な返事は。」 「みょ、妙って何ですか!烝さんだって、いつもと違うじゃないですか!」 「俺はいつも通りだ。君が変に緊張しているから、俺にも移っただけだろう。」 「それをいつもと違うって言うんじゃ・・・。」 「そんな事はどうでもいい。それより・・・。」 どうでもいいの?そんな疑問は声に出さず、首を傾げて山崎の次の言葉を待ってみる。 「緊張、しているとは思うが、嫌じゃ・・・ないか?」 「・・・え?」 「俺と、初夜を迎える事。嫌じゃないか?」 「嫌だなんて!そんな訳無いじゃないですか。どうして今更?」 「いや、今更・・・なんだ。今更なんだが・・・・先に言っておくと、実は俺も初めてだ。」 「・・・は?」 「・・・何だ、その苦虫を噛み潰して更に薮蚊にでも纏わり付かれたような顔は。」 「どんな顔!?って言うか、初めてとか嘘吐かなくてもいいじゃないですか!」 「嘘じゃない。本当だ。」 「絶っ対、嘘ですよね!?だってお仕事で島原とか!女性相手の間者働きで・・・その・・・そう言う事した事あるって・・・前に。」 「ああ、それは本当だな。仕事で女を抱いた事はある。」 「選りにも選って初夜にはっきりきっぱり言う事ですかぁ!?」 「だから・・・仕事でしかないと言ってるんだ。」 「え・・・?」 「女を抱いたのは、仕事でしかない。本気で、自分が望んで抱くのは君が初めてだと、そう言ってる。」 「・・・本当に?」 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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