シン

お前の価値
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机の上に所狭しと並べられた木の実達。
それらを前にしてニィナは息を詰めてシンを見詰める。
「これは毒キノコ。
こっちは笑い筍。
それは痺れ草。
・・・コレは痛み止めになる。
これとあれは食べられる。
他は全て毒にしかならない。」
「は・・・。」
今日も半分以上がっ!!
頑張って採ってきたのに、毎回半数以上が毒でしかないモノばかり。
今日はたまたま薬になる木の実もあったようだが、それはほぼ奇跡に近い偶然。
「うう〜〜。何回教えてもらっても覚えられないよ〜〜。」
「お前が覚える必要は無い。俺が知っている。」
「でも!食材は全部シンが採ってきてくれて調理までしてくれるのに!私何も出来ない!
少しは役に立ちたいんだもん!」
「そう思うなら何もせずに俺の傍にいろ。お前は森の中を一人でうろうろするな。」
いつものように感情の読み取れない声と表情で投げ付けられた言葉。
自分が役立たずだとは充分判ってはいたがはっきり言われると更に情けなさに拍車が掛かる。
「・・・迷惑なら、一緒にいない方がいいんじゃない?」
「・・・?何を言っている。」
「だって、私が一人でうろうろすると、今日みたいに毒キノコばっかり採ってきたり、この前は熊に襲われそうになったり・・・。
崖から落ちそうになった事もあったよね。」
「そうだな。お前は戦いではそうでもないのに、普段は注意力が無さ過ぎる。」
「だったら、一緒にいたらシンには迷惑なんじゃない?面倒でしょう?その度に助けるの。」
「??何を言っている。迷惑なんかじゃない。
迷惑であるとすれば、お前が傍にいない方が迷惑だ。」
「・・・・はい?」
「お前が隣にいないと動悸がおかしい。姿が見えないと、足元が崩れるような感覚がある。
だからお前は俺の隣にいてくれた方がいい。」
「え〜と・・・・?」
「食材も調理も全て俺がする。お前は何もしなくていいから俺の横にいろ。それが一番迷惑でもなく役に立つ方法だ。」
要するに、自分が傍にいないと不安になるから視界からいなくなるな、と言う事なのだろうか?
相変わらず感情の読めない口調に戸惑うニィナだったが、おずおずとシンの隣に立ちその手を握ってみる。
そうしてシンを見上げれば、その頬が薄っすらピンクに染まったような気がする・・・。
「えと・・・この方が、落ち着くのかな。」
「いや・・・・また動悸が激しくなった気がする。」
「あ・・・う・・・・。離れてた方が、いい?」
「いや・・・このまま。必要以外は、お前はいつもそうして俺の横にいろ。」
「・・・うん、判った。ずっとシンの隣にいるね。」
「ああ。」
何も出来なくても役立たずでも、ただいるだけでいい存在。
シンに少し認めてもらえた気がしたニィナは、繋いだ指に少し力を込めてシンを見詰める。
返される瞳の感情は読めないけれど、少し細められたそれが幸せそうに見えたから、ニィナは安心してシンの隣に立つ事が出来るのだ。
何も与えてくれなくていい。
お前と言う存在だけが、俺にとって価値がある・・・。



→オマケ
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