短編集

甘い果実〜40万HIT:紫T様リク
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「ひっじかったさん!」
朝からご機嫌に土方の肩を叩いたのは一番組組長・沖田総司。
対する土方は朝からすこぶる機嫌が悪い。
いや、朝から・・・ではなく最近頓に機嫌が悪い。
それと言うのも数日前、屯所に彼等目当てに押しかけた女達との押し問答を千鶴に目撃された揚句、
数日に渡り無視され続け、とりあえず謝ると言い張る総司を止める為に呑み比べをして勝負が有耶無耶になって以来、
しつこくしつこくしつこく総司がまとわりつくようになったからだ。
「土方さん、土方さん?土方さ―ん?土方副長―、土方歳三さ―ん?豊玉さ―ん?」
「ぅうるせぇぇぇぇ!!一遍呼べば聞こえんだよ!耳元で叫ぶな!!っつかその名を出すな!!」
「えぇ―?聞こえてるなら返事して下さいよ、本当に意地悪ですよね。意地が悪いって言うか性格が悪い?
顔だけはそこそこいいのに、勿体ないと思わないんですか?ねぇ、土方さん」
「だから!五月蠅せぇってんだろが!用もねぇならまとわりつくな!俺は忙しいんだよ!!」
「やだな、用ならありますよ、僕だって忙しいんですよ?」
忙しいなら毎日毎日朝からうろちょろするなと言いたいが、ここで反論しても水掛け論になるのは目に見えている。
図体だけはデカイが中身は子供なこの男を追い払うには『用』とやらを聞いてやるしかない。
ロクでもない用だと思いつつ、うっかりそんな気になってしまう位最近の総司はしつこかった。
「判ったから、用とやらをさっさと済ませて巡察行って来い!」
「さすが話が早くて助かりますよ。じゃあ、早速勝負しましょう、土方さん」
「何の話だ、総司」
目が点になるとはこういう事か。
こいつは急に何を言い出す?
先日は私闘御法度だからと呑み比べなんぞを持ち掛けておいて結局自分から下りたくせに、また勝負しよう?
新選組の副長としても承服しかねる『用』とやらに土方の眉間が深く皺を刻んだ。
それを実に楽しそうに確認した総司は、別の言い方で土方に勝負を持ち掛ける。
「大丈夫ですよ、何も剣でとは言ってないでしょう?そうだな・・・どっちが上手に千鶴ちゃんを喜ばせる事が出来るか、とかどうですか?」
「な・・・んでそこで千鶴が出て来る!」
「だって、前の勝負も千鶴ちゃん絡みだったんだから、今度も千鶴ちゃんが関係してくるに決まってるじゃないですか」
何が決まってるだ!
前回も今回も、勝手に千鶴を巻き込むな!
前回は巻き込まれたのではなく当事者だったのだが、鬼の副長も総司と千鶴が絡むと正常な判断が出来なくなるらしい。
鬼に金棒、鬼に沖田総司。
どちらも最凶最悪な組み合わせだ。
どちらにしろ今回は全く関係ない千鶴としては大迷惑な話だろう。
なのに、何故だろう。
「あの・・・お呼びになったご用件は何でしょう?」

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