短編集

Trick or Treat〜320000HITあゆちょこ様キリリク
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一触触発状態の中、怪訝な顔をした山崎に千鶴はどうしようと視線を彷徨わせ、平助はここぞとばかりに先程の一件を山崎に教えてやった。
「総司の奴が千鶴に悪戯するってんだぜ?トリック・オア・トリートってさぁ!
あれは10月31日だけのお祭りだろ?もう終わっちゃってんじゃんか!」
「平助、五月蠅いよ?それはさっきも言ったでしょ?
僕としては当日の方が良かったけど、風邪引いちゃって家から出れなかったんだからしょうがないじゃないか」
「だから今日ですか、寝言は寝て言って下さい沖田さん。ハロウィンは当日のみだからこそ楽しいんです。
それを四日も過ぎた今日とはいくら貴方でも無茶振りが過ぎると言うモノでしょう」
「何言ってるの?寝言は寝てるから寝言って言うんだよ?起きた状態で言える訳ないでしょ。
それとも山崎君には僕が寝てるように見えるんだ?
へ〜?君こそ目を開けたまま寝てるんじゃない?」
「貴方なら起きているように見せて寝るなど造作もないでしょう、授業中によくやっているようですし。
それにしてもこれだけ会話している俺が寝ているように思えるとは。
その若さでボケたんですか?早々に老人ホームの予約でもした方がいいんじゃないですか?」
「ボケてるのは僕じゃなくて山崎君でしょ?
君があんまり頭の固い事言うから和まそうと思った僕の思いやりが判らないなんて、頑固親父の見本みたいだよね、ねぇ、千鶴ちゃん?」
「え!?」
「彼女に話を振るのは止めて下さい、迷惑です。
俺が親父なら貴方はお子様ですね、沖田さん。
体は大人で頭は子供ってどこの名探偵ですか。貴方の場合は迷探偵ですが」
「それを言うなら体は子供、頭脳は大人の間違いでしょ。
どこのって君、彼が何処に住んでるか知らないの?米花町だよ?」
「それ位知ってます!俺が言ってるのは貴方が彼とは逆に周囲に迷惑しか掛けていないと言う事です!」
「ハロウィンのお菓子が欲しいって言うののどこが迷惑になるのか教えて欲しいな、相変わらず山崎君の思考回路って理解不能だよね」
「こちらこそ貴方の思考回路は全くもって理解不能です!
大体お菓子が欲しいなら土方さんにでもおねだりすればいいでしょう」
「何で僕がお菓子欲しさに土方さんに悪戯しなきゃいけない訳?そんなの毎回やってるし、ハロウィンだからって関係ないよ。
これは可愛い彼女が相手だからこそ楽しいんじゃないか。
それとも何?君は見た目も中身も可愛い彼女にお菓子を貰うより見た目も中身も頑固で判らず屋の土方さんの方がいいって言う訳?」
「そうは言ってません!俺だって彼女の方が・・・あ、いや・・・!ともかく!土方さんが嫌なら永倉さんにでも言えばいいでしょう!」
既にハロウィンの話からかなり論点がズレ当人である千鶴を余所に二人の言いあい、と言うよりただのじゃれ合いにも見える口論に終わりは見えない。
真ん中に挟まれた千鶴としては居た堪れないどころの話ではなく、とっくに始業のチャイムも鳴った事から早く事態を収拾しなければと思うのだが・・・。
「馬鹿じゃないの?なんでそこで新八さんが出てくるのかなぁ?土方さんよりマシかもしれないけど見た目の暑苦しさなら土方さんの当社比500倍位でしょ!?」
「500倍は言い過ぎです!せめて100倍程度に収めて下さい!」
どっちにしても永倉が土方より暑苦しいと肯定している事に変わりないのだが、山崎は気付いてはいないようだ。
「千鶴、二人は放って授業の準備を始めるといい。ああなれば誰にも止められはしないからな」
「あ、はい・・・でも・・・」
「一君の言う通りだって!今の二人を止めようだなんて自殺行為だぜ?」
終わらない口論に飽きてきた平助といつもの二人に閉口した斎藤はさっさと席に着き授業準備を済ませたようだ。
だが千鶴は未だに鞄を持ったまま入口付近で右往左往している。
元は自分のせいだと思えば放っておく訳にもいかないのだが、それが裏目に出てとんでもない事態を巻き起こす羽目になってしまった。


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