短編集

君の声を聞きながら
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新選組では週にニ・三度若い衆が島原へと繰り出す。
殺伐とした隊務の憂さを晴らすには酒と女の揃った其処は打って付けだった。
副長である土方も時には同行する事もあるが、自分が居ては心行くまで楽しめないと思い滅多に足を運ぶ事は無かった。
そして一番組組長である沖田は酒が呑めればいいだけなので、白粉の香りに酒の味が変わってしまうとあまり行きたがらなかった。
今夜も永倉や平助が連れ立って島原へ向かったが、二人は屯所に留まりそれぞれの部屋で手酌酒を楽しんでいた。
「あいつ等が居ないと、やけに屯所が静かに感じるな。」
苦笑しながら一人酒を呑む土方だったが、あまりの静かさにふと人恋しくなる。
誰かと呑むかと残った面々を思い浮かべ、結局一人しか思い付かなかった。
(総司と呑む酒なんか絶対不味いに決まってるしな。)
そうして土方は名目上は自分の小姓である少女の元へと向かった。
一方、こちらも自室で一人酒を楽しむ沖田。
「やっぱり一人で静かに呑むのが一番だよね。」
それ程上等ではない酒でも、味わい方によってはそれなりに旨く感じるモノだと満足気味。
だが夜空に浮かぶ月を見上げ、こんな夜に間抜けにも自分達に捕まった少女を思い出す。
(そう言えば、一人で何してるのかな。)
折角邪魔者達が出掛けているのだ。ゆっくりお互いの理解を深める良い機会だと少女の部屋へと足を向けた。

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