2/4ページ目 時は少し遡る。 屯所では基本として食料となる生き物以外の飼育を禁止している。 屋敷の裏手で毎朝けたたましい刻を告げる雌鳥や、見ているだけで暑苦しい豚などが適用外生き物となる訳だ。 よって愛玩動物等の類は飼育出来ないし、それを破って土方の逆鱗に触れようと言う強者もいない。 それは土方の忠実な腹心として幹部としてやや堅苦しいまでに真面目な斎藤とて例外ではない。 その斎藤は先程から屯所の裏手にある河川敷を何やら白い器を持ってウロウロと彷徨っては溜息を落とすと言う、何とも憂いた表情が艶めかしい様相で佇んでいた。 同じ所を何度も行ったり来たりする様は、何か捜し物でもあるのか思わず声を掛けたくなってしまうが例え声を掛けたところで無表情に不要と切って捨てられるのがオチだったろう。 そうこうする内に目当てのモノを見付けたのか解り難くはあるが僅かに目元に弧が描かれた。 「此処にいたか、捜した」 草に向かい話し掛ける背中は独り言を呟く寂しい人だが本人は至って嬉しそうだ。 「にゃー」 その時草むらから聞こえた声は決して斎藤が発した訳ではなく、もしもそうなら沖田辺りが目を輝かせて話の種にしそうだが実はやはり斎藤ではない。 見下ろす先には三色の毛並みと大きな瞳、長い髭が愛くるしい一匹の子猫。 「にゃー」 もう一度甘えるように鳴いた子猫の顎の下を撫でて、斎藤の笑みは益々深いモノになる。 「腹が減ったろう、飯だ、ミケ」 何うっかり名前まで付けちゃってんですかと問いたい所だが本人曰く屯所で飼っている訳ではないから問題は無いと胸を張るだろうと予測される。 無い訳あるかい、このお馬鹿とツッコミが聞こえてきそうだが当然斎藤にそんな空耳が聞こえる筈もなく、持って来た器を差し出すと子猫はさっそく飛びついてハグハグと食事を始めた。 白い器には餌が入っていたようで、一心不乱に食べる猫の額を撫でながら満足そうな斎藤の手がふいに止まった。 「ミケ、何をつけている」 後ろ足に絡まった白い布を取り除き、しげしげと検分を始めた斎藤だったがそれが何かさっぱり解らない。 だが小さな三角形で真っ白いそれは医療に使う包帯の類やもしれないと思い至り、松本良順に替わって新選組で医師を務める山崎の元へ赴く事にした。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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