2/4ページ目 と言う訳で、何故か和気藹々としていた新年の祝いの席が殺伐とした羽子板対決へと場を移す事になってしまった。 渦中の千鶴はと言えば、何故こんな事にと頭を悩ませつつも久しぶりの感触に顔を綻ばせている。 「んじゃ、俺は審判って事でいいな? 基本なんでもありだが羽以外の攻撃、羽子板以外で打つのは反則。 真ん中の線からはみ出しての攻撃も反則。 反則毎にお約束、墨で相手から顔に書初めして貰えや。 五回反則をするか五回羽を落とせば負けだ。 異存はねぇな!?野郎共!」 「おお!!」 ウキウキする千鶴を余所に、何故か殺気立ち始める参加者一同。 「一回戦!斉藤対新八!」 「よっしゃ!手加減しねぇからな!」 「望む所だ・・・。」 普段無口な斉藤と、頼まれずとも騒がしい新八。 「あ!斉藤、あんな所に長州藩士が!!」 「・・・いる訳なかろう・・・新八、脇が甘い!」 下らない罠で斉藤を貶めようとする新八に、冷静な斉藤が応戦する。 それぞれの顔の書初めはお互い四箇所づつ。 なかなか付かない決着に終止符を打ったのは斉藤の一言だった。 「・・・新八。お前の後ろで千鶴が着物を・・・。」 「え!?」 思わず振り返った新八の後頭部に、斉藤の放つ強烈な一撃が決まった。 「お前の敗因は雑念の多さだ・・・。」 卒倒した新八の顔に五個目の書初めを施す斉藤を見ながら、他の隊士は侮れない!と新たに褌を絞め直した。 「次!左之助対平助!平助!若ぇんだから、やられてんなよ?」 「お二人とも頑張って下さ〜い!」 「・・・千鶴、先程俺達に声援が無かったのは何故だ・・・。」 「だって、ちょっと皆さんの雰囲気が怖くって・・・でも、もう慣れました!これでこそお正月の羽根突きですよね!」 ニッコリ笑う千鶴に更に参加者の勝負魂に火が点く。 「おいおい・・・千鶴よ。火に油注いでどうすんだよ?」 「左之さん!余所見してっと泣き見るぜ!?」 「洒落くせぇ!やれるもんならやってみな!」 平助の言葉に熱戦の火蓋が切って落とされたが、左之助が持ち前の背の高さを生かした高い位置からの打撃に平助は苦戦気味。 「千鶴、平助のヤツに声掛けてやったらどうだ?」 「あれ?土方さん審判は公平にですよ。」 「そりゃそうなんだが・・・あの身長差はちっと不憫でな・・・。」 確かに、頭二つ以上も差がある体格では左之助に分があり過ぎと言うモノだろう 。 「平助君!頑張って!下から捻るみたいに打つといいよ!」 「千鶴!?おい、そりゃ酷くねぇか!?」 「ありがと!千鶴!行くぜ!左之さん!!覚悟!」 千鶴の助言を生かした平助の渾身の一撃が左之の腹部に決まりポトリと羽が落ちた。 「いってぇ!くそったれ!」 「へっへ〜ん、左之さん失礼しま〜す♪」 普段二枚目で通っている左之助の顔に、黒々と墨で太眉毛を書き込む平助。その顔に思わず千鶴も吹き出した。 「平助・・・てめぇ、覚えてろよ?」 「おいおい、勝負の禍根を後に残すなよ?負けたてめぇの腕を恨め。って事で次行くぞ〜。」 「うわ!土方さん完璧他人事!?」 ぶぅぶぅ文句を垂れる左之助を放置し、次なる対戦。山崎対総司。 「手柔らかにね?山崎君。」 「手加減は無用ですよ、沖田さん。」 はっきり言って普段から犬猿の二人。 穏やかに試合が始まる訳もなく、殺気を撒き散らしながら羽が飛び交う。 それはもう延々と・・・。 「って言うかこれさ・・・。」 「終わりが見えんな・・・。」 「いつまで続くんでしょうねぇ?」 「土方さん、いっそ引き分けとかは?」 「俺は構わねぇが、あいつらは納得しねぇだろ 。」 「引分け!?冗談じゃないですよ、土方さん!」 「勝敗を決めてこその試合です!」 「あ、じゃあ緊急参戦って事で、私入りま〜す!」 「「え!?」」 二人が目を剥き土方が止める間もなく二人に割って入る千鶴。 どうやら観戦しているだけで退屈だったようだ。 しかもさすが年季が違う。 瞬く間に沖田・山崎両名の顔を書初めで埋めて行く様は、さながら羽子板御前とでも言えばいいのか・・・。 「もう!お二人共、手加減してませんか!?情けは無用ですよ!?」 「してないってか出来ないよ、千鶴ちゃん普通に強いよ。」 「確かに、俺もここまで屈辱を味わうとは思っていませんでした。」 「ふふ、じゃあ、先に私から一点取った人の勝ちでどうですか?土方さん。」 「・・・ああ、それでいいんじゃねぇか?」 ぶっちゃけ自分も参加すれば良かったと後悔する土方は、半ば投げやりに千鶴の提案を受け入れる。 途端二人の構えにも気合が込められた。 「ごめんね、千鶴ちゃん。これも勝つ為だから。」 「すまない、千鶴君!覚悟!」 「甘いですよ!お二人とも!!」 それぞれの強烈な一撃が同時に千鶴に襲い掛かる。思わず目を覆う平助達だったが、次の瞬間勝ち誇ったような千鶴の笑い声。 「やった〜い!沖田さんに勝った〜!」 「悔しいなぁ〜〜〜??何で山崎君は無事な訳?」 「・・・普段の行いと言うモノです。」 千鶴の返した羽は、総司の羽子板の角を正確に狙い撃ち返し損ねた羽が自陣へと虚しく落ちた。 一方山崎はと言えば、同じく強烈に打ち返された羽だったが、総司とは違い真正面に飛んで行き、綺麗に打ち返された羽が千鶴の陣地へと落ちたのだ。 「じゃあ!沖田さん、失礼しますね?」 何故か非常に楽しそうに千鶴は総司の頬に二重丸を描いた。何故か花模様の・・・。 「ぎゃっははははは!!総司最高!!花!花〜〜!!!」 「平助・・・明日餅を食べる時は気を付けた方がいいよ?」 「・・・は・・・・。」 爆笑する平助だったが殺気たっぷりの総司の一瞥が顔面を強張らせるには充分だった。 「お前ら〜次いいか〜?次はくじで対戦決めるぞ〜。当りは一回休みだからな。」 最早自分的にはどうでもいい土方が適当にくじを作り、それで対戦相手を決める。残った三人は慎重にクジを引き・・・。 「俺が当たりのようです。」 「って事は斉藤と平助の対戦か。今度は背も変わらねぇから、声援も必要ねぇだろ。」 「そうですね!でも、頑張って下さい!斉藤さん!平助君!」 「んじゃ、始め!千鶴〜肩揉んでくれ、どうも肩が凝ってな。」 「あ、はい。土方さんも新年位はゆっくりされて下さいね?」 「おお。ありがとよ。」 白熱した試合を繰り広げる二人を余所に、妙にまったり寛ぐ土方と千鶴。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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