1/1ページ目 最近何事か忙しく、ゆっくり休めていなかった総司は久しぶりの非番。 ブラブラしていたら近藤に呼び止められた。 「総司、暇なら雪村君の着物を新調しに大丸に行ってやってくれんか?」 総司は断る理由なんかないと千鶴を探し出すと、彼女はすぐに見付かった。余計な人物と共に。 「何で左之さんも一緒なのさ。」 「俺は土方さんから千鶴の着物を選んでやれって頼まれたんだ。」 「へ〜?僕は近藤さんからだよ。僕がいるから左之さんはゆっくり休んでたら?」 「お前こそ最近よく咳してんじゃねぇか?寝てたらいいぜ?」 「・・・・あの・・・・お二人共?」 「君の着物は僕が」 「お前の着物は俺が」 「「選ぶから!」」 仲良くはもりながら呉服屋に着くと、二人はさっそく反物を物色し始める。 千鶴はと言えば内心自分で選びたいのだが、半ば殺気立ちながら店内をうろつく二人にそんな言葉を差し挟める筈もなく 呉服屋と共に部屋の隅で震えていた。 「千鶴ちゃん!これどうかな?可愛らしい君にはぴったりだよね?」 「千鶴、それよりこっちはどうだ?お前には清々しい色が合うだろう?」 総司が持ってきたのは鮮やかな桜色の反物。 左之助は涼しげな空色。 どちらも見事な染物で、甲乙付け難い。 「え・・と・・・どちらも、素敵ですね?」 「何で!!?こんな寒々しい色より僕の方が暖かそうだし極上の染物なんだよ!?」 「何言ってんだ!お前の色じゃ、可愛すぎて合わねぇんだよ!普段どうすんだ!?今からの季節涼しい色がいいに決まってる!」 激しく言い合いを始める二人に、千鶴はどうしていいか判らない。 困った挙句に店主に助けを求めれば、青い顔でふるふると首を振られてしまった。 「「どっちがいい!!??」」 お互い牽制し合っていた二人は、ぐりんっと千鶴に向き合うと、見た事もない形相で詰め寄ってくる。 あまりの剣幕に内心逃げ出したい千鶴だが、二人の殺気がそれを許さない。 「「で!どっちにするの!?」」 実はどっちも嫌です〜〜とは思いつつ言えない千鶴。 助けは望めないと諦めながらも見回した沿道に、ある人物を見つけこれぞ救世主!と大声で助けを呼ぶ。 「さ・・・斉藤さ〜〜ん!!!」 巡察中だった斉藤は、情けない声で自分を呼ぶ千鶴に目を向けた。 大丸屋に入れば、殺伐とした空気を漂わせる総司と左之助。 怯えた様子の千鶴と店主。 散乱した反物の山・・・。 「なるほど・・・。」 全てを即座に理解したらしい斉藤は、店内をぐるりと見回すと、反物を一本と帯を一本選び出した。 「こちらとこちらを合わせれば、男装でも女装でも着られるだろう。」 斉藤が選んだ反物は淡い山吹色。自分達とは全く違う選択に二人が色めき立つ。 「斉藤?それは千鶴には合わねぇんじゃねぇか?」 「そうだよ一君。千鶴ちゃんには渋すぎるよ。」 「そう思うなら本人に聞いてみろ。」 斉藤の言葉に千鶴を見れば、山吹色の反物を肩にかけ店主と楽しそうに仕立て具合の相談を始めている千鶴。 「「え”・・・!?」」 そんな・・・・!! 声にならない悲嘆に暮れる二人を余所に、仕立ての日取りを決めた斉藤はとっとと外へで出て行ってしまう。 「俺は巡察に戻る。ではな、千鶴。」 「あ!待ってください斉藤さん!ご一緒します!!」 先程までの二人に怯えていた千鶴は、随分楽しそうに斉藤と連れ立って行ってしまった。 残されたのは、それぞれの選んだ反物を握り締めた二人。 強く握り過ぎて皺が寄ったそれは、既に売り物にはならない・・・。 「沖田様、原田様、お買い上げありがとうござい〜〜。」 大丸屋の高らかな声だけが響き渡る店内。 呆然と自失する二人は放置状態。 その二本の反物は千鶴へと献上され、結局得をしたのは千鶴と大丸屋のみ。 新しい着物を三枚新着出来た千鶴は、上機嫌で斉藤と微笑み合いながら町を歩く。 (次は、美味しいご飯が食べたいな〜) 実は全て千鶴の策略だと、新選組幹部が気付くのはいつの日か来るのだろうか・・・。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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