考察・・・新選組

井上 源三郎の場合
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井上 源三郎の場合


「源さん!私を鍛えて下さいませんか!?」
「おや雪村君、どうしたんだい?急に。」
いつも護られてばかりな自分に臍を噛んでいる事を知っていた井上は、ゆっくりと千鶴の話しに耳を傾ける。
「そうか・・・しかしねぇ、私の指導ではそれ程上達出来ないと思うよ?知っての通り、剣はからっきしだからね。」
朗らかに笑う井上に、千鶴の鬱々とした心も晴れ晴れとなる。
「では源さんの鍛錬にお付き合いしてもいいですか?」
「もちろん、いいとも。」
では早速と剣を取り、素振りを始める井上。
その横で共に剣を振り、汗が滴り落ちる程続けた頃には、すっかり日が落ちていた。
「随分・・・・長くされるんですね・・・・。」
ぜぇぜぇと息を上げる千鶴に対し、井上は呼吸一つ乱していない。
「持久力だけは負けない自信はあるんだがねぇ・・・。」
ニコニコ笑う井上につられて、思わず笑みを零した千鶴は、まるで父といるようだと錯覚を起こす。
「雪村君、お茶をどうぞ。運動した後の茶は、美味しいねぇ。」
「わ〜ありがとうございます!ホント、美味しいですねぇ。」
二人並んで腰掛けた縁側には、優しい夕暮れの風が吹き込んで
流れた汗もすっかり乾く頃、疲れ切った千鶴は夢の中。
そんな千鶴の寝顔を見ながら微笑む井上もまた、まるで娘といるようだと苦い笑いを零しつつ、紅い空を見上げて溜息を吐いた。
「せめて夢の中で位、お父上と再会出来ればいいねぇ。」
そんな井上の呟きを知ってか知らずか、まどろむ千鶴の口元には笑みが浮かんでいた。


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