巡るシリーズ

巡る季節 溢れる想いを君に〜桃花様リク
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「匡さん!?出張で長崎まで行かれてたんじゃっ・・・?」
「んぁ〜〜、さっき帰って来たばっかだっつぅの。めちゃくちゃ疲れたし、あいつ人使い荒過ぎだろ。」
「お疲れ様でした。お茶、新しく淹れて来ますね?」
「いや、これでいい。どうせ風間に淹れたけど忙しいとかで飲んで貰えなかったんだろ。」
「・・・う・・・。」
「バレバレだっての。縁側行こうぜ。日差しあったけぇし。」
「あ、はい。お疲れの匡さんにはお茶受けに取って置きのお菓子をお出しします!」
「いいねぇ。じゃ、先行ってるからな?」
ひらひらと手を振り盆を持って縁側に向う匡の背中を見送った千鶴は、自分も大好物の御菓子を取りに台所へと向った。
「ねぇ、あの御菓子あったよね?」
「千鶴様?千景様にお茶を持って行かれたのでは?」
「そうなんだけど、千景さん忙しくて飲んでくれなかったから。丁度匡さん帰って来たし、一緒に食べながらお茶する事にしたの!」
「え・・・匡様とですか?」
「うん、そう。だから、あの御菓子出すね。」
いそいそと千景と食べる為に買っていた御菓子を持って行く千鶴を、賄いの少女は呆然と見送った。
千鶴が縁側まで着くと、既に匡は長い足をブラブラと組んで美味そうに茶を啜っている処だった。
「匡さん!お待たせしました!これ・・・。」
「おお・・・待ってたぜ・・・って!おわっ!?危ねぇ!!」
急いで駆けて来る千鶴は敷居に思いっきり爪先を引っ掛けて転びそうになる。
しかし素早い動きで千鶴を抱きとめ、更に御菓子の載ったお盆も無事その手に納めた匡は、にかっと笑って冷や汗を拭った。
「あ、ありがとうございます、匡さん・・・。」
「おっ前・・・いきなりビビらすなよなぁ〜。危うく俺の菓子がおじゃんになるとこだったろうがっ。」
「って・・・私よりお菓子ですか!?」
「わははは!冗談だって!本気にしてんじゃねぇよ、馬〜鹿。」
くしゃくしゃっと頭を撫でて千鶴を縁側に座らせると、自分もその隣に腰を下ろして菓子を頬張り出す。
「もしかして、お腹空いてます?」
「んぁ〜。トンボ返りだったからな。落ち着いて飯食ってねぇんだわ。」
「せっかく長崎まで行かれたんだから、ゆっくりされれば良かったのに。」
「まぁなぁ。けど、とっとと用事終わらせてお前の顔も見たかったし?」
「え・・・?」
ほとんど一口で菓子を平らげて行く食べっぷりを飽きれて見守る千鶴は、いきなり向けられた言葉に思考が固まる。
それを横目で見ながら茶を飲み干すと、再びにかっと笑って頭を撫でた。
「騙されたか?」
「・・・!!も・・・もぉ!!匡さん!!」
落ち込む自分を励まそうと疲れているにも関わらず笑顔で相手をしてくれる匡に、千鶴も素直に甘えてじゃれ付く。
「・・・ねぇ、あれ、拙くないの?」
「拙いだろ!拙過ぎだろ!」
「・・・千景様はまだお仕事だよな?」
「あ、ああ。けど、そろそろ終わる筈・・・。」
「その前に何とかしないと!!」
最近元気がない千鶴が匡とじゃれ合い楽し気なのはいいのだが、それを見守る侍従と侍女の内心は穏やかでない。
こんな楽しそうな千鶴を(しかも笑顔の先にいるのは別の男)千景が目撃した時を想像すると怖過ぎる!
青ざめる若者3人の後ろに、正に鬼化した家人の気配がどろどろと漂い始めたのは正にその直後。
「・・・な、何か・・・。」
背中寒いんですけどっ!!??

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