巡るシリーズ

巡る季節 溢れる想いを君に〜桃花様リク
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「頭領。」
「五月蝿い。」
「・・風間様。」
「黙れ。」
「・・・若様。」
「誰がだ。」
「ちかげさ・・・。」
「失せろ。」
「・・・・。」
幾度となく繰り返される押し問答。
言い返す方も声を掛ける方も疲れるが、素直に出て行く筈も無い相手が急に沈黙した事を不審に思う。。
しかも少し違う声音が聞こえた気がした千景はゆっくりと振り返った。
そこには今まで居た筈の風間家筆頭侍従の姿は無く、愛しい妻である千鶴が無言で立っていた。
そう言えば、最後の声はしゃがれたジジィのそれではなく・・・。
「お前だったか・・・。」
「・・・失せろって、私におっしゃいました?」
「いや、今のは糞ジジィに言ったんであってお前に言ったのではない。」
「私、ちゃんとお名前お呼びしたつもりだったんですけど・・・?」
「・・・つい・・・弾みで出ただけで本意ではない。その位お前でも判るだろう。」
「『お前でも』・・・?」
「・・・俺がお前に失せろ等と言うと思うか。」
「・・・じゃあ、さっきのは『つい』『弾み』でおっしゃっただけで、私に向けた言葉じゃなかったんですね。」
「そうだ、納得したか。全く、この忙しい中侍従の阿呆も要らぬ事ばかり言ってくる。」
「要らない事って何ですか?」
「お前には関係ない。今日はまだ仕事が片付かん。もう少し大人しく待っていろ。」
千鶴が納得したと見做した千景は、再び背を向けて仕事に取り掛かる。
対して千鶴は千景が忙しくしているのを知っていたからこそ少し休憩を、と思いお茶を入れて来たのだが、千景はそれに気付く事もなく黙々と仕事を再開する。
その様子に少し寂しそうに瞳が翳るが、それを千景に気付かせる事無く執務室を後にした。
淹れ立ての熱いお茶を盆に載せたまま、とぼとぼと廊下を歩いていると、ひょいと上から盆が持ち上げられる。
「きゃっ?」
「な〜に、やってんだ?お前は。」

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