巡るシリーズ

巡る季節 見守る瞳
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「あ〜終わった終わった〜!」
「ホントね〜やっとって感じ。」
「皆様お疲れ様でした。千姫も、お疲れでしょう?こちらに軽いお夜食をご用意しておりますので、どうぞ。」
「かたじけない、君菊殿。」
風間家頭領、風間千景と、雪村家最後の生き残りである千鶴の祝言は、厳かに滞りなく執り行われた。
それもこれも皆、ここにいる4人が、それこそ骨身を惜しまず準備や根回しに走り回ったからに他ならない。
無事祝言が終わった今、この4人の感慨も、一層深まると言うモノ・・・。
「なぁなぁ。」
「何よ、不知火さん。」
「千鶴のヤツ、いつになったら解放されると思う?」
嬉々として今現在寝所に篭る、新婦について聞いてくる不知火。
それに対して、他の3人は異口同音。
「「「一週間後」」」
「だよなっ!絶対休みの1週間の間解放されねぇんだぜ!来週千鶴の顔見んのが楽しみだな〜。」
「あんた悪趣味ね。」
千姫が冷ややかな目で不知火を睨み付ける横で、何やら天霧と君菊は思案顔。
「あん?どうした?オッサン。」
「私はオッサンではない。いや・・・1週間もとなると・・・彼女の体は大丈夫だろうかと・・・。」
「あぁ!そうよね!風間は絶倫ぽいからいいとして、千鶴ちゃんの体が心配だわ。」
「そりゃ大丈夫じゃねぇか?風間もその辺うまくやんだろ。慣れてんし。」
慣れてんのかよ!?と言う一同の突っ込みはあえて無視し、天霧の顔はやはり晴れない。
「しかし・・・千鶴様は初めての経験でしょう。次にお顔を拝見する際には、腕の良い按摩師をご紹介した方がいいかもしれません。」
「あら、そんな必要ないわよ、君菊が凄く上手だから。ね?君菊。」
「え?あ、はい、そうですね、私でよろしければいくらでも・・・。」
何やら考え込んでいた君菊は、急に矛先を向けられ慌てて笑顔を作る。
「?君菊どうしたの?何か悩み事?」
「いえ、悩みと言うか・・・。」
「何だよはっきりしねぇな。」
「は〜・・・その、千鶴様のお体の事なのですが・・・。」
「何!?どこか悪いの!?」
「いいえ!違います!そうでなく、この調子で参りますと、その・・・すぐにでもご懐妊・・・と言う運びになりませんでしょうか?」
一同、君菊の控えめな発言に一瞬固まった後・・・
「ホントだ・・・そう言えばそうだよね。腕のいいお産婆さん捜さなきゃ!」
「乳母の手配も必要でしょうね。」
「お産の準備とかどうするよ?ってか俺ガキの世話の仕方なんか知らねぇ!」
「・・・オシメを作らねば・・・。」
「私だって赤ちゃんの育て方なんて知らな・・・って、え!?」
皆が騒ぐ中、一人冷静にオシメオシメと呟く男、天霧九寿。
「天霧?オシメって・・・そりゃ一番最後でいいんじゃねぇか?」
「何を言う。千鶴様がお産みになる御子だ。さぞ珠のように愛らしく美しいお子に決まっている。その肌をお包みするオシメは最高級の
布で作らせるべきだろう。今から布を手配すべきだ。」
「・・・・。」
(ちょっと!千鶴様がお産みになるとか言ったわよ、この人!!)
(はい、確かに、珠のように愛らしく美しい御子だと・・・)
(もしかしてもしかしなくても、こいつ・・・)
(((千鶴の事・・・!?)))
まだブツブツとオシメについて熱く語る天霧。一瞬浮かんだ恐ろしい考えに
風間にだけはバレませんようにと被りを振ったのは言うまでもない。
「まぁ、まだ決まった訳じゃねぇしな?」
「そうね、懐妊が知れれば準備を始めましょう。」
「けれど腕のいい按摩師は必要ですね、今から訓練して腕を上げますわ。」
皆が一様にざわつく中、この家の主がフラリと姿を現した。
「・・・五月蝿いぞ。何を騒いでいる・・・。」
「お?どうした〜?もう新妻に厭きたか?」
ニヤニヤ笑いながら不知火がそんな茶々を入れるが、風間は鼻で笑って一蹴する。
「厭きる事などあろう筈がない。あれは一生俺を楽しませてくれるからな。」
「あ、そう。」
何気に思い切り惚気られた気がする不知火は、呆れた顔で肩を竦めて先ほどの会話を風間に伝える。
「けど、この調子じゃ赤ん坊もすぐ出来んだろう?厭きる厭きねぇの話じゃねぇんじゃね?」
「・・・・赤子か・・・・。」
「そう、赤ちゃん。最初はやっぱり男の子?私は女の子がいいわ。きっと千鶴ちゃんに似て可愛いわよ。」
「男であっても千鶴様のお子であれば・・・「そ〜〜〜だよ!風間!そういう準備とかってもうしとくか!?」
天霧の台詞を途中で遮って不知火も風間に話を振るが、当の主はそれに答えるでなく、君菊に向き合うと、千鶴の湯浴みの手伝いを命じる。
「貴様らが何を期待しているが知らんが、俺は当分あれに子を産ませるつもりはない。」
「・・・・は?何で。」
「あれは俺のモノだ。誰にもやらん。が、我が子となればそうも言ってられんだろう。
だからだ。君菊、湯浴みが終われば俺の部屋に連れて来い。」
「はい、風間様。」
風間は、それだけ言うと足早に部屋へと戻ってしまう。残された3人は、顔を見合わせ先程の言葉の意味に首を捻る。
「要するに、もし子が出来たら・・・。」
「千鶴がその子にかかり切りになるから?」
「それが嫌だから当分、子は作らないって事・・・・?」
「風間様は独占欲も強い方ですから。」
「・・・・。」
「それって・・・さ。」
純血の子を産ませる為に連れて来て、いつしか二人は愛し合い、妻が愛しくて仕方無い夫は
我が子に妻を取られたくなくて子作りはやらない宣言をかました。
可愛い新妻を迎えたばかりの風間家の未来は、きっと明るい筈・・・・ね?


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