巡るシリーズ

巡る季節 永久に共に
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祝言の間には、本当に沢山の人が集まり、現れた私達に感嘆の声を上げて歓迎してくれる。
厳かな雰囲気の中、祝詞が奏上され、千景さんが低く通る声で自分の名を、私が自分の名を誓詞奏上し滞りなく式は終了した。
式場から退出した後、千景さんは再び私の手を取り慈しむように抱き上げる。
「ち、千景さん!?」
「この後披露目があるのだろう。存分に見せてやるさ、お前がどれ程素晴らしい女か、俺がどれ程お前に惚れているかをな。」
「はいはいはいはい、判ったから千鶴ちゃんを降ろして頂戴。お披露目用の衣装に着替えるんだから。」
「千姫、いい所で邪魔をするな。」
「したくてしてる訳じゃないの!皆様お待ちなんだから!もう少し位我慢しなさいよ!」
「ふん。」
千景さんはお千ちゃんに一喝されると、つまらなさそうに鼻を鳴らして私を降ろしてくれる。
「では、またすぐ後でな。」
私は笑って頷くと、お千ちゃんと君菊さんに急かされるように着替え始める。
遠くでは同じように千景さんを急かす匡さんの声が聞こえた。
私達はそれを聞いて、くすくす笑いながら着替えを終えていく。
最後の簪を私に刺しながら、お千ちゃんが嗚咽を漏らしている事に気付く。
「お千ちゃん!?どうしたの!どこか痛いの!?」
「違うの・・・今の千鶴ちゃんを見てたら、本当に良かったなって・・・。」
「あ・・・。」
京にいる間も、京から新撰組を追って北上する間も、お千ちゃんはずっと心配してくれて力になってくれていた。
今では私の一番の友達。
「良かったね。千鶴ちゃん。旦那はあんな我侭大王だけど、でも良かったね。」
君菊さんも一緒になって涙ぐみ、私も思わず涙腺が緩んでくる。
「あぁ、いけませんよ、千鶴様。お化粧が落ちてしまいます。綺麗に直しますから、お待ち下さいね。」
そう言って、君菊さんの優しい手が私の頬に触れてくれる。
私は、本当に幸せだなと実感しながら広間に戻ると、広間の前には匡さんと天霧さんが立っていた。
「よぉ。綺麗にしてもらったじゃねぇか。」
「ありがとう、匡さん。天霧さんも、ありがとうございます。」
「いや、これから大変だと思うが、仲睦まじくな。」
優しい笑顔で二人もお祝いを言ってくれて、私ははにかみながら広間に入る。
広間では、既に大量な酒樽が空になっており、出来上がっている人が大勢いた。
と、言うか、皆さん呑むの早いです・・・。
「これは・・・。」
「まさに死屍累々って感じになってんなぁ。」
「お披露目も何も関係ない騒ぎようね。」
「正直、主役お二人がいなくても勝手に盛り上がるのでは・・・。」
4人ともの台詞に思わず私もそうかも・・と納得しかけた。けど、やっぱりお披露目をきちんと終えてこそ
お式が終了した事になると思った私は、ちゃんと挨拶する旨を皆に告げる。
「あ、やっぱりちゃんとするんだね、そう言うと思ったよ。」
ちょうど遅れてきた千景さんにもそう伝えると笑って頷いてくれる。
「当然だな、最後の締めを終えん事には、後味も悪い。」
「ん!じゃ、ちょっと待ってね?みなさ〜〜ん!!新郎新婦のお見えですよ〜〜!!!!」
お千ちゃんは、にこっと笑うと既に泥酔状態多発な皆さんに向けて大声で呼び掛ける。
その声に一斉にこちらを向いた一同に、千景さんは私を掬い上げるように抱き上げて高らかに宣言した。
「今日からこの女が風間家頭領である俺の妻だ。皆も既に見知っている事と思うが、俺に継ぐ者として、新たに認識しろ。」
千景さんの声にわ〜と言う歓声が上がる。そこかしこで祝いの言葉も聞こえる。
「おめでとうございます!頭領!」
「千鶴様!お幸せに!」
「頭領万歳〜!!」
口々に上がる声に、私は嬉しさの余り涙が滲んでくるのを抑えられなかった。
「どうした、何を泣く事がある。」
「・・れしくて・・・・嬉しすぎて・・・。私、こんなに幸せでいいんでしょうか?」
「当然だな、この俺の妻になったんだぞ?幸せになれずにどうすると言うんだ。」
「その自信がどこから来るのかぜひ教えて頂きたいわね。」
お千ちゃんが厭きれたように腰に手を当て肩を竦めて見せる。
「風間〜こっちはもういいからよ、休んで来いよ。早く二人っきりになりたいんじゃねぇの?」
「後はこちらでお世話致しますので、千鶴様もどうぞ・・・。」
「疲れただろう、構わないから気にせず休んで来なさい。」
匡さんも君菊さんも天霧さんも皆が気遣ってくれる。
私は千景さんに目配せして降ろして貰うと、改めて皆に深々と頭を下げて挨拶をする。
「皆さん、至らない事も多々あると思いますが、風間家の嫁として精一杯やていきますので、ご指導よろしくお願い致します。」
私が顔を上げると、一面優しい笑顔が広がっていた。
私はその笑顔に、幸せになっていいんだよと認められた気がして、更に嬉しくて笑みを深めた。
それを見届けた千景さんは、私の腕を軽く引き、部屋へと二人で戻った。

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