風間家保育日記

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風間家保育日記〜千景君の初恋日記@〜


本日は千景殿が初めて(自称)許嫁であると言う雪村君に会いに行ったようだ。
結果は・・・推して知るべしだろう。
ともかくもっと相手を知る事から始めねばと助言した。


○月×日  かざま ちかげ

  今日はおれのいいなづけだという女に会い行った
  ・・・はっきり言っておれはげんめつした
  なぜおれがあんなはなたれみたいなおんなと・・・
  でも、笑ったかおは、もういちどみたいと思わないこともなかったかもしれない

「ここにゆきむらちづるという女がいるだろう。出せ。」
「あぁん?」
体の体積に似合わぬ態度の大きさで、新選組屯所門前で踏ん反り返る少年が一人。
後ろに控える黒い怪しい男二名。
新八は平隊士から何故自分が引き継ぎを受けたか判らないが、はっきり判った事。
それはこの少年と自分は決して相容れないと言う事実。
「何だぁ?てめぇは。千鶴に会いてぇってならまず名乗るのが道理じゃねぇのか?
大体目上に対する礼儀も知らねぇのか?」
「ふんっ!ずうたいばかりでかいばくふのイヌが。くだらんことをぬかしていないでちづるを出せ。」
「てっめぇ・・・俺の図体がでけぇならテメェは態度がでけぇだろうが、チビ!」
毒舌、と言って差し支えのない少年の言葉に新八のコメカミに青筋が数本浮き上がる。
まさに一触即発となった場面に、緊迫感を叩き壊す舌足らずな声。
「ぱっちゃ〜たらいま〜〜。」
「おわっ!千鶴!!土方さん、駄目だって!今帰ってきちゃ!!」
「あ?何でだ?」
「今この糞餓鬼が!」
「だまれイヌが!おまえがゆきむらちづるか。おれのなは風間ちかげだ。きさまをむかえにきた。いくぞ。」
「・・・ほえ?としちゃ、こえ、だれ?」
「きさま!おれがいま名のっただろう!ひとのはなしをきいておけ!」
「新八・・・任せた。」
ぽんっと新八の肩を叩き、屯所内に戻ろうとする土方と千鶴を千景は慌てて呼び止める。
「まて!そのおんなはおれのいいなづけだ!わたしてもらおう!」
「・・・はぃ?」
「・・・寝言は寝てから言えよ、坊主。お前が千鶴の何だって?」
「だから・・・「お話中失礼します。私は天霧九寿。こちらにいらっしゃる千景殿の目付け役をしております。
        後ろに控えているのは同じく目付け役の不知火 匡。本日伺ったのは、そこの雪村千鶴殿に会いに参った次第。」
「あまぎり・・・きさま、おれのせりふを・・・「このお坊ちゃまがそこの千鶴ってガキの許嫁だって言い張るんでね。確かめに来たって訳だ。」
目付け役二人に自分の台詞を尽く奪われ少々ご機嫌の悪くなってきた千景坊ちゃま。
キッと土方を睨みあげると再び千鶴へ声を掛ける。
「そういうことだ。りかいしたならおりてこい。おれはそれほどひまではない。」
「おい、天霧とか言ったか。」
「は、何でしょう?」
「『何でしょう?』じゃねぇだろ?何だ、この礼儀知らずな糞餓鬼は?目上のモンへの接し方を教えてから出直して来い。
じゃねぇと・・・・「としちゃ、いいなじゅけて、なに?」
ぎろりと天霧を睨んでいた土方の目尻が、千鶴に話し掛けられた途端に下がりまくり、
(ふ、副長としての威厳がっ!!)
新八は色んな意味で焦りまくる。しかしいつでも千鶴激愛の土方にそんな新八の内心の叫びが届く筈もない。
「許嫁ってのはな、結婚の約束をした相手の事だ。けど、千鶴はこの餓鬼とそんな約束はしてねぇだろ?」
「っあい!してまちぇん。おにちゃ、はじめまちてね?としちゃ〜おんりしゅる。こんにちわ、しゅるからおんり!」
ぺちぺち肩を叩いてせがまれれば、土方は渋々千鶴を下ろして千景の前に連れて行ってやる。
「はじめまちて。ちるるでしゅ!おにちゃ、きえいなめめね〜。」
小さな手を差し出されて、思わず握り返した千景の顔に触れそうな程近付いて覗き込む千鶴。
そこに浮かぶのは純粋な好奇心と邪気の無い笑顔。
仰け反りながらも正面から向けられる千鶴の笑顔に、顰め面だった千景も薄く笑みが浮かべていく。
「はじめまして。だな。ちづる。おれはちかげだ。おまえはおれのつまになるおんなだ。
だからこれからおれといっしょにくらすんだ。」
「ちゅま?けっこんしゅるんでしゅか?」
「そうだ、そこにいるおとこどもとも、とうぜんはなればなれだ。おまえはじゅんけつのおにのまつえいだから。
おれとけっこんするのがいちばんいいんだ。」
「・・・ちかげにいちゃ、むじゅかちぃ・・・。」
「と、とにかくおまえはおれとずっといっしょにくらすんだ!だからそいつらにわかれをいえ!」
「・・・おわかえ?としちゃと、ばいばい?」
「そうだ!はやくしろ!」
「おい、餓鬼。黙って聞いてりゃ好き勝手言いやがって、何様のつもりだ?」
「おれはかざまさまだ!まぬけなまがいものどもなど、くちをきくのもけがらわしい!」
「てんめぇ・・・・。」
土方と新八の我慢が臨界点を突破しかけた時、小さく響くのはしゃくりあげる千鶴の泣き声。
「ちるる、としちゃとばいばい、いや・・・。みんにゃとばいばい。したくない。ちかげにいちゃ・・・ちるるおにちゃとけっこんしない。
「なにをいってるんだ!おまえはおになんだぞ!こんなひとごろしのイヌたちといっしょにいたら、しあわせになんかなれんぞ!?」
千景の、どちらかと言えば図星を突く一言に拳を上げかけた新選組の二人の怒りも急激に下がっていく。
「雪村君。千景殿の言う通り、君は我々と共に来た方がいい。」
「でも、ちるるみんなといっしゅがいい。としちゃ・・・ちるる、いっしょだめ?ちかげにいちゃと、いっしょいかないとだめ?」
「そんな訳ねぇだろ?千鶴はずっと俺と一緒だって約束したじゃねぇか。千鶴は約束を破るのか?」
「ううん!ちるるゆびきりした!としちゃとやくしょく、した。」
「だったら、ここにいりゃいいんだよ、千鶴が土方さんと離れたくないなら、ずっといりゃぁいい。
おい、糞餓鬼。てめぇが千鶴を連れて行きてぇのはよ〜く判った。だがな!千鶴がこう言ってる以上、俺達は千鶴を手放す気はねぇんだよ!
例え・・・俺達が人斬りだとしてもな・・・。」
新八と土方は、千鶴に優しく微笑んだ後、風間千景に鋭い視線を向ける。
「きさまら・・・!」
屈辱に歪みかけた千景を抑えたのは不知火と名乗った長髪の男。
「はいはいはいはい。坊ちゃん、今日んとこは帰りましょうや?一遍振られてま〜だ縋るのはみっともねぇよ?」
「う、うるさい!しらぬい!!おれはすがってなどいない!」
「はいは〜い、じゃあ帰りましょうね〜。ってな訳なんで、俺ら帰るし、その危ねぇ殺気治めてくれたら嬉しいな、と。」
「本当に帰るんならな。」
「かえるわけが・・「帰りましょう、千景殿。雪村殿を泣かせたままでよろしいので?」
天霧の言葉に、ぽろぽろ涙を流す千鶴の顔を見た千景はそれ以上何も言わずに黙ってしまう。
「そんじゃまぁ、そういう事なんで、今日んとこは帰らせてもらいます〜。千景坊ちゃん、かえ・・・・。」
帰りましょうと声を掛けようとした不知火が固まる。千景は子供にしては鋭い眼差しに今のも零れそうな涙を溜めて震えていたからだ。
「千景殿・・・。」
「お前・・・。」
これにはさすがの土方も新八も絶句するしかない。先程までの尊大な態度など見る影もなく俯いて涙を堪える姿は、年相応に可愛らしいと言えなくもなかった。
「・・・またっくる!つぎは、つれていくからな!」
そう捨て台詞を残して、天霧に手を引かれ、不知火に頭を撫でられながら、それでも強がりな態度を崩さない千景の唐突な登場と
同じく唐突な退場に、残された三人は首を捻るしかない。
「としちゃ、ちかげにいちゃ、またくりゅ?」
「いや・・・来なくて結構だ。」
「っていうか、来ないでくれ・・・。」


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