2/4ページ目 山南さんが斎藤さんに呼ばれて出て行ってから、私はやり掛けだった繕い物を終わらせ綺麗に畳んだ。 私に与えられていた部屋を見回し、片付いている事を確認するとそっと外へ出た。 永倉さん達が出掛けて人の少ない今しかないと思った。 今なら、後ろ髪引かれる事なく新選組から離れられると・・・。そう思って外に向かった私の前に立ち塞がる影。 「漸く、自分の立場を理解したか?」 「不知火さん・・・。」 「だから俺が言ってやっただろう?ここに居てもいずれ化け物のお前は疎まれるだけだってな。」 「そんな事、無いです。皆さんは大切な私の仲間です。いつだって、私に優しくしてくれました。親切にしてくれて、守って下さいました。」 「じゃあ何でお前はこんな夜更けにたった一人、新選組から離れようとしてやがるんだ? 今はそうじゃなくても何時かそうなる、それが判ってるからそうなる前に逃げちまおうとしてんだろう?」 「止めて・・・。」 「俺達鬼と人間は所詮相容れない存在。化け物と人間は、一緒には生きてけねぇんだよ。」 「止めて・・・。」 「生きていけたとしても、鬼として存在を利用されて捨てられるだけ。」 「止めて!!」 淡々と残酷な言葉を吐き出す不知火さんに向かって、精一杯の虚勢で睨みつける。 けれど唇も手も、自分でも判る位に震えていて、何の威力もない事は判り切っていた。 それでも前を向いていなければ、何かに向かっていなければ私は立つ事すら出来なかった。 父様も居ない。新選組にも居られない。 これからは、たった一人で生きていかなくてはならないのだから、こんな言葉に傷付いて立ち止まっている訳にはいかなかった。 不知火さんは、そんな私をまるで凪いだ池のような静かな瞳で見下ろしていた。 伏見奉行所で私に向かって投げつけた鋭い視線ではなく、とても静かで、とても悲しい色の瞳。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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