1/4ページ目 鳥羽・伏見の戦いで大敗を記した幕府軍と新選組は、大阪城から逃げるように脱出した慶喜公を追って海路を使い江戸へと陣を移した。 夜半、苛立ちを隠そうともしない永倉さんの怒鳴り声が釜屋に響き渡る。 「ああ!我慢ならねぇこの辛気くせぇ空気!こうなりゃ吉原でも行ってぱ〜と騒ぐに限るぜ!」 鬱々とした雰囲気に嫌気が差したんだろうなと、隊士達を連れて出掛ける背中を見送っていた。 原田さんは一人で考えたい事があるからと何処かに行ってしまう。 こんな時、決まって私の元を訪れるのは羅刹隊を率いる山南さん。 ああ、今夜もまた、あの台詞を聞く事になるのか。 ゆっくりとこちらに近付く山南さんの顔を見詰めながら、私は暗く沈む心をそのままに繕い物の手を動かしていた。 「君がそんな事をする必要は無いんですよ。君にはもっと新選組の為に役立つ方法があるでしょう?」 「山南さん・・・。」 「それにまだ戦況も悪化していない内は皆も優しく守ってくれるでしょう。しかしこのままだと幕府はいずれ負けます。 そうなった時、鬼である君の面倒を彼らが見続けてくれると思いますか? ですが我々は君と同じ人為らぬ身。 君を蔑んだり疎んだりする者は我が部隊には誰一人居ません。そして新選組の皆の手助けにもなる一石二鳥ではありませんか?」 ああ、もう止めて。判っているから。知っているから。 私は化け物で、役立たずで、お荷物なだけ。守られるしかないだけでなく、鬼と言う厄災を招き入れる疫病神。 「いつまで、鬼である自分の存在から目を逸らし続けるつもりですか?」 逸らしたい訳じゃない。 逸らしてる訳じゃない。 判っているの。 もう、 十分過ぎる程に判っているの。 だから、もう止めて。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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