短編集

掲げられた温もり〜紗那様80000HITキリリク
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最初に辿り着いたのは、淀城下を見渡せる高台。
そこに広がる錦の御旗に、旧幕府軍は完全な政敵として追われる立場になった事を強烈に理解した。
「あいつらが、命を賭けて戦ったとしても、結局幕府に利用されてるだけってこったな。
新政府も旧幕府軍も、金や権力だけが目的なんだよな。
どうする?俺的にはお前をこれ以上連れ歩くのは勘弁してもらいてぇんだけど。
風間もいねぇし、新選組で遊ぼうにもなかなか追い着けねぇしな。
あいつらで遊ぶ餌にならねぇお前に用もない。
ってか寧ろ新選組と一緒だったお前連れてちゃ俺の身が危ないっつの。」
「あの・・・ご迷惑なのは、判ってます。でも・・・お願いします。私を、江戸まで連れて行って下さいませんか。
出来るなら、この目で新選組の最期を見届けたいんです。」
無理なお願いだとは判っていた。
けれど今の私には彼しか頼る人がいなかった。
ひたすら頭を下げ続ける私に、再びくしゃりと頭を撫でると、不知火さんは何も言わずに手を引いてくれた。
「死ぬような事んなっても責任取らねぇからな。」
共に旅した時間は短いけれど、この人は酷く不器用でとても優しい人なんじゃないかと思う。
新選組を追い続ける私に、無駄な事は止めろと言いながら彼らの行方を捜し情報を集め険しい山道を手を引いて歩いてくれる。
礼を伝えると怒ったような顔でそっぽを向いて、困ったように笑いながら頭を撫でてくれる。
新選組の安否を気遣いながら、不安で夜も眠れない私の傍にただ居てくれる。
何も言わない優しさに、私は随分と救われていた。
だから、江戸で父様と風間さんに再会した時、彼が私を風間さんに引き渡したとしても仕方が無いと諦めようと思っていた。
「お前の父は、どこまでも金と権力にしがみ付く人間共に利用された挙句に捨てられた。
その半生は運が無かったとしか言いようがないな。
お前は間違えるな。奴等を追い求めて何になる。俺と共に来い、千鶴。」
羅刹を大量に生み出し、戦場へと送り続けた父様。
救われる筈がなかった父様に、それでも鬼の頭領である風間さん手ずから引導を渡してくれたのは、せめてもの手向けだったのだろうか?
灰になってしまった父様は、本当にもう居なくなってしまったのだと思うと知らず涙が零れそうになった。
「わ・・・私・・・。」
何とか声を絞り出した私に、不知火さんはポンっと頭を撫でるとそのまま自分の肩に私の顔を押し付けた。

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