短編集

掲げられた温もり〜紗那様80000HITキリリク
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目の前に煌く刃は、きっと冷たいのだろうなと呑気な事を考えていた。
人生の最期なんて、呆気ないな。
そう覚悟を決めて目を瞑ったのに、白刃の一撃はいつまで経っても訪れなかった。
恐る恐る目を開けた私の目の前に立っていたのは・・・。
「不知火・・・さん・・・?」
「お前、此処で何やってんだぁ?」
「あの・・・。」
「ってかよ、新選組のヤツらは何やってんだよ?あんだけお前を守るとか偉そうに言って、結局守ったの俺じゃねぇ?」
西の鬼である風間さんと共に、私を連れに来たと言っていた不知火さんが、酷く呆れた顔で私を見下ろしていた。
私はどうしようもなく震える体を誤魔化すように、小太刀を構えたまま不知火さんを見上げていた。
そんな私に向って、不知火さんは深い深い溜息を吐くと、ポリポリと頭を掻きながら私の目の前にしゃがみ込んで、くしゃりと顔を緩めて笑い掛けてくれたのだ。
「あのよ、別に捕って食ったりしねぇから、ちっとでも助かって良かった〜とか、助けてくれて有難うゴザイマス〜とか思うなら、それ、納めてみねぇ?
心配しなくても風間んとこ連れてったりしねぇから。」
「あ・・・。す、すみませ・・・。」
「んぁ〜〜。ま、いいけど。で、何でこんなとこで一人でいるんだ?新選組の奴等は?」
「あの・・・逸れてしまって・・・。」
「ふ〜ん。どっちにしろ此処らは危ないぜ。薩長に制圧されちまってっから、あいつ等んとこ戻るなら敵兵の中を潜り抜けてかなきゃ無理だぜ。
ついでに言うと、多分旧幕府軍が向ってる淀城も寝返った筈だ。お前一人で追い駆けるには、無理があるぜ。」
「淀城が・・・そんな・・・。」
不知火さんの言葉に、皆が危険に晒されていると知って居ても立っても居られなかった。
けど彼の言う通り一人で薩長軍の中を旅する事が、どれ程危険かも判ってしまった。
(どうしよう・・土方さん・・・原田さんも・・・皆・・・。)
一人でどうすればいいか判らず混乱する私に、不知火さんはポンっと頭を撫でると仕方無いなと笑って手を引いてくれた。
「俺も江戸に向うつもりだったし、しょうがねぇから連れてってやるよ。」
そうして、不知火さんと二人きりの奇妙な旅は始まった。

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