短編集

ムカつく男
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一方、風間の元へと戻った千姫は・・・。

「どこに行っていた。」
「北よ、千鶴ちゃんに会いに。」
「千鶴に?何用でだ。」
「そこまで束縛されるの?私はただ子を産むだけの道具でしょう?」
私がひらひら手を振りながらそう言い放つと、風間はふっと黙ってしまった。てっきり「当然だ」とか
返って来ると思ったのに。
「ま、いいわ。今日は私、貴方に伝えなきゃいけない事があるのよ。」
「何だ。」
私が正面から彼に向き合い目を合わす事は、今まで滅多になかったので、彼自身少し身構えて問い返してくる。
「あのね、私、どうも貴方の事が好きみたいなの。」
「・・・・何?」
いつも冷静で尊大な男にしては、珍しく目を見開いている表情は、少し得した気分になる。
私は、自ら着物を脱ぎながら彼に抱きつき宣言する。
「だから、子を産むだけで解放するつもりはないの。覚悟してね?」
必ず捕まえるから・・・。
私は呟きと供に口付けをして、腰に回された腕の力強さに身を委ねた。

ムカつく男。
無駄に自尊心だけは高い。
けれどそれに見合うだけの強さを持つ
尊大な男。
なのに、何故こんなに愛しくなってしまったの・・・・。

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