剣と桜と私と貴方

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「千鶴!!」
今度こそ、はっきり聞こえた、その、声。
忘れられない。
忘れる筈がない。
愛しい愛しい、あの人の。
焦がれて焦がれて止まなかったあの人の。

「千鶴!!」
懐かしい顔が、そこに在った。
「千鶴!!」
「永倉さん!」
私達は、お互いの名前を呼びながら駈け寄る。
もう少しで、手が届く。あと、少し・・・!!
なのに、私の体は急に後ろへと引かれた。
「久しぶりだな、愚かな人間。」
風間さんは私の体を抱えると、見せ付けるように首筋に口付けを落とした。
「・・・!?かざっ・・・」
「黙れ。何も言うな、声を、出すな。」
私にしか聞こえない声で、風間さんは短く言い放つ。
逆らえば殺すぞと釘を刺して。
「っ・・・・てめぇ!!千鶴に何しやがった!!」
「何をした・・・だと?
俺はこの女を花嫁にしたいと連れ帰った。
あれから幾日経ったと思う。
俺が何もせずにいたと思うか。
愚問だな。
この女は、既に俺のモノだ。」
「・・・っっな!?」
発せられた言葉に驚きすぎて、喉が引くつく。
何を言い出すのか、この人は。
この状況では、まるで私達が本当の夫婦になったように見られてしまう!
「ち、ちが・・・・」
咄嗟に訂正しようとした私に、再び頬に口付けしながらまたもや風間さんが囁く。
「帰りたいのだろう。あの男の元へ。言い訳など、その時いくらでもすればいい。」
だから、今は何も話すな。
賭けを忘れるなと言う風間さんに、私は何も言えなくなってしまう。
後ろでは、不知火さんが深く溜息をつくのが見える。
「てっめぇぇ!!」
怒りに瞳を滾らせ風間さんを睨み付ける永倉さん。そんな彼を必死に抑える原田さん。
あの様子では、きっと永倉さんの傷も完全に癒えている訳ではないのだろう。
私は自問する。
まだ癒えない傷を抱える彼を、愛しい人を犠牲にしてまで
私は彼の元へ帰る事を望むのだろうか。
あの時は辛うじて急所が外れていた。
でも・・・・
もし、今度同じような事になれば・・・・!!!

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