剣と桜と私と貴方

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すっかり散ってしまった桜を見て、私は溜息を零す。

「桜・・・散っちゃったなぁ・・・」
「どうかされましたか?」

背後からの声に一瞬飛び上がりそうになる。
けれどその声の主を認めて安堵する私は、すっかり此処に慣れてしまった。
「別に、どうも。ただ、桜が散ったなぁと思って。」
あの日、飛び散った紅と混じった薄紅の華が、今はもう緑にまみれてしまった。
「あぁ・・・」
私の言葉に、天霧さんも窓の外へと目をやる。
「早いですね、あれからもう、一月ですか。」
「はい、あっと言う間な様な、長かった様な気がします・・・。けれど・・・。」
つと、言葉を詰まらせる私を、天霧さんは微かに笑って首を振る。
まるで、それ以上は言わなくても判ると言いたげに。
「行かれるんですね。」
問い掛けではない。確認の言葉。
「はい。行きます。」
「そうですか・・・。」
「一月、ありがとうございました。」
私は、きっちり天霧さんに向き合うと、深々と頭を下げた。
彼はそんな私の肩をやんわりと押さえ、顔を上げるよう促す。
「それはこちらの台詞です。よく・・・あのまま死を選ばないでいてくれましたね。」
穏やかに微笑む天霧さんに、私もにっこり笑い返す。
「もう一度逢いたい人が、しぶとく生きてるって教えてもらいましたから。
もう後悔はしたくないんです。
だから、その為に、私は行きます。」
「いい目ですね。出来れば、このまま我々と共に歩んで欲しかった。
けれど、貴女の求める道は、此処には無いのですね。」
「はい」
真っ直ぐに、前だけ見詰めて答える私に、少し眩しそうに目を細めた後、流れるような動きで立ち上がった彼は、少しだけ私に待つように言う。
「必ず自分が連れて行くのだと息巻く男がいるものですから。」
苦笑しながら天霧さんが連れて来たのは、不知火さん。
漆黒の髪を持つ、少し永倉さんに似た鬼。
「行くのかよ。」
「はい。」
「んじゃぁ、まぁ・・・気張って着いて来いよ?」
にかっと笑って、不知火さんは私を外へと連れ出してくれる。
そろそろと、辺りの気配を探りながら進む。
「このまま行けりゃ、いいんだがな。」
しかし・・・
「そうは、上手く転ばねぇわな〜。」
苦笑とも、自嘲とも取れる声で笑う不知火さん。
その視線の先には・・・。
「何処へ、行く。」
金の髪の鬼。風間千景が静かに佇んでいた。

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