2/4ページ目 すっかり散ってしまった桜を見て、私は溜息を零す。 「桜・・・散っちゃったなぁ・・・」 「どうかされましたか?」 背後からの声に一瞬飛び上がりそうになる。 けれどその声の主を認めて安堵する私は、すっかり此処に慣れてしまった。 「別に、どうも。ただ、桜が散ったなぁと思って。」 あの日、飛び散った紅と混じった薄紅の華が、今はもう緑にまみれてしまった。 「あぁ・・・」 私の言葉に、天霧さんも窓の外へと目をやる。 「早いですね、あれからもう、一月ですか。」 「はい、あっと言う間な様な、長かった様な気がします・・・。けれど・・・。」 つと、言葉を詰まらせる私を、天霧さんは微かに笑って首を振る。 まるで、それ以上は言わなくても判ると言いたげに。 「行かれるんですね。」 問い掛けではない。確認の言葉。 「はい。行きます。」 「そうですか・・・。」 「一月、ありがとうございました。」 私は、きっちり天霧さんに向き合うと、深々と頭を下げた。 彼はそんな私の肩をやんわりと押さえ、顔を上げるよう促す。 「それはこちらの台詞です。よく・・・あのまま死を選ばないでいてくれましたね。」 穏やかに微笑む天霧さんに、私もにっこり笑い返す。 「もう一度逢いたい人が、しぶとく生きてるって教えてもらいましたから。 もう後悔はしたくないんです。 だから、その為に、私は行きます。」 「いい目ですね。出来れば、このまま我々と共に歩んで欲しかった。 けれど、貴女の求める道は、此処には無いのですね。」 「はい」 真っ直ぐに、前だけ見詰めて答える私に、少し眩しそうに目を細めた後、流れるような動きで立ち上がった彼は、少しだけ私に待つように言う。 「必ず自分が連れて行くのだと息巻く男がいるものですから。」 苦笑しながら天霧さんが連れて来たのは、不知火さん。 漆黒の髪を持つ、少し永倉さんに似た鬼。 「行くのかよ。」 「はい。」 「んじゃぁ、まぁ・・・気張って着いて来いよ?」 にかっと笑って、不知火さんは私を外へと連れ出してくれる。 そろそろと、辺りの気配を探りながら進む。 「このまま行けりゃ、いいんだがな。」 しかし・・・ 「そうは、上手く転ばねぇわな〜。」 苦笑とも、自嘲とも取れる声で笑う不知火さん。 その視線の先には・・・。 「何処へ、行く。」 金の髪の鬼。風間千景が静かに佇んでいた。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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