剣と桜と私と貴方

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それからは、少しずつではあるけれど、私は体力を回復していった。
5日もの間、ほとんど飲まず食わずだった私は、もう1日でもそのままであったなら、本当に死んでしまっていたらしい。
毎日三度の食事を運んでくれるのは天霧さんであったり、お千ちゃんであったり、不知火さんであったりした。
風間さんは、あの時以来、顔を見せないけれど・・・。
中でも不知火さんは、いつもこっそり私に永倉さん達の事を教えてくれる。
傷は深かったけれど、辛うじて急所から外れていた事。
不知火さんが会った時は、意識が戻ったばかりだった事。
彼もまた、私を救出すべく傷を癒しつつ体力をつけている事。
そんな事を、やっと1人で座る事が出来るようになった私に語ってくれる。
その度に、ありがとうと微笑むと、ぶっきら棒にそっぽを向いてしまう。
「別に。今みてぇに弱っちぃてめぇを見てるのが、嫌なだけだ。」
本当に不器用で、でも優しい人。少し、鬼らしくないかなと思ってしまう。
「でも、大丈夫なんですか?」
「なぁにが?」
「だって・・・風間さんにバレたら、拙いんじゃないですか?」
「あぁ!?知るか、あんなヤツ!
俺はなぁ、確かに純潔な女鬼のてめぇが、同じ純潔の風間の野郎とくっつきゃいいとは思ってたさ。
けどな、こんな弱っちまったてめぇをよ、そのまま嫁にしても意味ねぇと思うんだよ。
おめぇはな、弱いくせして俺を睨みつけた気合だきゃ誰にも負けねぇだろ。
おめぇみてぇな気の強ぇ女には、あの馬鹿犬みてぇな男じゃなきゃ、手綱取れねぇだろが。
風間にゃ、役不足だろが。」
褒められているのか貶されているのか、判断付きかねる口調で一気に捲くし立てて来る。
「あの・・・それって?」
「連れて行ってやる。」
「え・・・?」
一瞬、何を言われたか判らなかった。
その位小さな、囁くような声。
「千姫も、天霧も俺に賛成だ。このまま置いといておっちんじまうのは、忍びねぇんだとよ〜」
にやりと笑いながら私の頭を撫でてくれる。
何だかこうしてると永倉さんを傷つけた鬼の仲間と話してるとは思えない。
「ま、問題は、風間だけどなぁ。
何時になるか判んえねけど、俺がおめぇを馬鹿犬んとこ連れてくのが先か、あいつらが乗り込んでくるのが先か・・・。
どっちにしても、もっと体力付けてねぇとな?」
もう一度、ぽんぽんと頭を撫でてから不知火さんは出て行った。
それからも入れ替わり立ち替わり食事を運んでくれたり、湯浴みをさせてくれたり(さすがに君菊さんだけに手伝ってもらった)
甲斐甲斐しく世話をしてもらえる。
こんな風に、誰かに自分の事を任せきりにした事はなかったから、少し気恥ずかしい。
ようやく自分の力だけで歩けるようになったのは
桜もすっかり散ってしまった、初夏の風が吹く頃だった。


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