剣と桜と私と貴方

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「んでよ。」
「ナンデスカ。」
視線をズボンに向けたまま、火熨斗を当ててゆく。
私の冷たい対応に、ひくりと喉を轢く付かせながら負けじと声を掛けてくる。
相変わらず、根性だけはある人だ。
「千鶴は、一体誰が好きなんだ?」
「・・・・っ!」
ほんっと〜〜に・・・この人は・・・!!
「なぁ、俺には言えねぇ相手か?まさか新政府軍にいるとかじゃねぇよな?」
「ッ違います!」
私の剣幕に、咄嗟に頭を庇う永倉さん。
今、私が持っているのは火熨斗。それで頭を殴られれば明らかに致命傷になるだろう。
プルプルと怒りに震える私に、怯えながらも更に問い掛けてくる。
「じゃぁ、本当に誰なんだよ・・・?」
「はぁ〜〜」
長く溜息を吐き出し、永倉さんに向き直る。
「永倉さん。」
「はいぃっ!?」
おもむろに姿勢を但し向き合う私に、声をひっくり返しながら正座をする。
ぴしっっと尾っぽを直立させる犬のようだなと思いながら、彼の目を見て静かに真実ではない言葉を告げた。
「私には、いません。」
「へ?」
「好きな人なんか、いませんから、だから・・・」
心配しないで下さいね、ずっと傍にいますから、と
微笑んで語り掛ける。
「そ・・・・」
私の言葉を聞いて、驚いたように永倉さんが何か言い出そうとした、正にその時。
ガシャ―――ンッ!
「ぐわぁ〜っ!」
何かが壊れる大きな物音と、誰かの叫び声。
「何だ!?」
「新八!!」
永倉さんが刀を手に立ち上がるのと、原田さんが駆け込んで来たのはほぼ同時。
「左之!敵か!?」
「ああ!敵は敵でもっ・・・!」
原田さんは、ちらっと私に視線を寄越す。
まさか・・・・私の脳裏に、金の髪、紅い瞳の整った顔が浮かぶ。
「風間だっ!」
「・・・!」
原田さんの言葉を受けると、すぐさま駈け付けようとする。
「永倉さん!」
そのまま部屋を出ようとする彼を思わず呼び止める。
ぴたりと足を止め振り返るとにかっと笑った。
「心配すんな、千鶴。お前の事は、俺が必ず守ってやる!」
そう叫ぶと飛ぶように外へと向かう永倉さん。原田さんもその後に続く。
私は居ても経ってもいられず、彼らを追って外へと飛び出す。

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