剣と桜と私と貴方

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その後、会津から小山へと戦地を移した靖共隊は、新幕府軍に苦戦を強いられる事となる。
「あ〜やっぱ西洋式の戦は性に合わねぇな!剣でずっぱり切り込みてえぜ。」
「そう言うな、敵方が西洋式で応戦する以上、俺達もいつまでも武士の戦はしてられねぇよ。」
鼻息を荒くしながら不満を漏らす永倉さんを、原田さんが苦笑しながら落ち着かせる。
性格は正反対なのに、この二人やっぱり仲が良い。
私は気持ちが通じ合っている二人を少し羨ましく思いながら、お茶を差し出す。
「どうぞ、永倉さん、原田さん。」
「ん〜。」
「お〜〜やっぱ千鶴の淹れてくれる茶が一番だな。」
視線を逸らしながらお茶を受け取る永倉さんと、穏やかに微笑みながら受け取ってくれる原田さん。
まったくこいつは、と言う顔で原田さんは永倉さんを睨みつけるけど、私は大丈夫と言う風に首を横に振る。永倉さんがこういう時、照れ隠しに顔を背けるのは、もう慣れてしまった。
今更気にしていては、一緒に居られない。
「あ〜〜今夜は俺は寝るわ、千鶴、新八に付き合ってくれな。」
お酒を呑もうと誘う永倉さんに、原田さんはひらひらと手を振り部屋を出て行ってしまった。
残されたのは、身の置き場の無さそうな永倉さんと、私。
「あ〜〜・・・」
「お酒、呑まれます?熱燗つけて来ますね?」
「いや!いや〜〜」
「?いらないんですか?」
「ん〜いや」
「どっちなんですか。」
煮え切らない態度に私が眉を顰めると、思い切ったように口を開く。
「千鶴よ。」
「はい?」
「俺は、ずっとお前が土方さんを好いてると思ってたんだ。」
「みたいですねぇ。」
呆れたように私が嘆息すると、慌てて永倉さんは謝罪を口にする。
「それに関しては、悪かった!俺はこの通り武術馬鹿でよ、そういった男と女の事に関してはさっぱりなんだ。だから、今まで気付かなかったんだ。」
その言葉に、私の肩がピクリと反応する。
もしかして、苦節数年。
やっと私の気持ちに、気付いてくれた・・・?
「そうだよな、お前が土方さんを好いてたら、俺達に着いて来る訳がねぇんだ。
お前、あれだろ、そのぉ・・・。」
言い難そうに言葉を濁す永倉さん。
私はそんな彼をじっと見つめ、次の言葉を待つ。

「ほら・・・・
左之助が、好きなんだろ?」
あっけらかんと、告げられた言葉に私の思考も目の前も真っ白になる。


この人は・・・・!!!
「そうなんだろ・・・?」
な?と確認しようとする永倉さん。
「・・・・ちっ・・・・」
「ち?」
「違いますよ!!!馬鹿ぁ〜〜〜!!!!」
スッパ〜〜ンと、手に持っていたお盆で永倉さんの頭を張り倒してそのまま走り去る。残された彼がどんな顔をしていたか等、知る由もない。

「いっってぇ〜〜〜」
綺麗に張り倒された頭を擦り、顔を顰める永倉。
「んだよ・・・。違うのかよ、んじゃぁ・・・何で・・・」
どこまでも鈍感な男。
それが永倉新八その人である。
私の苦悩はまだまだ続く。
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