剣と桜と私と貴方

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そよそよと
春の暖かい風が吹く。
その風に煽られて桜が過ぎる時を惜しむように、散っていく。

慶応4年3月
私と、永倉さん、原田さんは、自らの理想を追い求めるあまり礼を失した近藤さんに別れを告げ、ここ、会津に潜伏している。

「なぁ〜」
食後のお茶を用意していた私に、永倉さんがやる気の無さそうな声を掛けてきた。
「はい、何ですか?お茶どうぞ。」
「あ〜ありがとさん。・・・千鶴は、よ。」
言いにくそうに視線を逸らす永倉さんに無言で先を促すと、やはり俯き目を合わせないままぽつぽつと話し出す。
「別に、俺達に付いてこなくて良かったんだぜ?俺達と来ちまったらよ、土方副長とも離れる事になっちまうだろ?
いやいや!俺はおめぇが来てくれて嬉しいぜ!?
けど・・・おめぇ・・・土方さんの事・・・。」
目を伏せる私に、慌てて手を振りながら言い訳を始める永倉さん。
最後は聞き取れない程の声で言葉を詰まらす。
「永倉さん。私、言いましたよね?」
「へ?な・・・何を」
「あの時、近藤さんへ永倉さん達が別れを告げた時。
『私も連れて行って下さい。永倉さん達と一緒に居たいんです』って、言いましたよね?」
「あ、ああ・・・言った。聞いたよ。忘れてねぇ。」
オロオロと視線を泳がす永倉さんに、私はビシッと指を突きつける。
「じゃあ、もう言わないで下さい。私は自分で選んだんです。
自分で、永倉さん・・・達と共に在りたいと願ったんです。」
「新八よ、お前も大概しつこいな。千鶴の人生だぜ?好きにさせてやれよ。」
「ありがとうございます、原田さん。」
にこっと笑いかければ、すまねぇなと小さく笑う原田さん。
本当に、永倉さんは全く判っていない。
どうして私が彼と共に来る事を選んだのか、全く判っていない。
まぁ、私もこの想いをあからさまにした事はないから、仕方無いと言えば仕方無いのだろうけど、それでも・・・。
「どうして土方さんなんだろう。」
永倉さんが席を外した後、は〜〜と大きく溜息を吐けば、原田さんが苦笑する。
「千鶴、お前、新八はそうゆう事は救いようがねぇ程鈍感だからな。はっきり言ってやらねぇと、いつまで経っても誤解したままだぜ?」
「・・・・私が土方さんの事を好きだって誤解ですか。」
「違うんだろう?」
「違いますよ、原田さんまで、何言ってるんですか。」
私が永倉さん、原田さんと共に会津に向かうと宣言した夜、原田さんにだけはこの想いを告げていた。
――――永倉さんの事が、スキなんです。離れたく、ないんです。
私がそう告げた時、原田さんは笑って頭を撫でてくれた。
頑張れよと、背中を押してくれた。私はその笑顔に励まされて、今ここにいる。

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