短編集

456789HIT:千愛様リク
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「いえ、それより凄いですね、私鶴位しか折れませんよ。これどうやって折るんですか?」
「総司の奴に教えて貰ったんだ。あいつガキ共とよく遊んでっからな。こういう事詳しいんだよ」
「総司・・・沖田さんですね」
「何だ?もしかしてまだ全員の名前憶えてねぇ?」
さすがに貴方の名前も咄嗟には出てきませんでしたとは言えず曖昧に誤魔化した千鶴に、それ程気を悪くした様子もなく今度は赤い千代紙を手に取り千鶴に渡す。
「ま、ゆっくり憶えてけばいいさ。俺は永倉新八、忘れねぇでくれよ?」
「はい、大丈夫です。憶えてますから」
にっこり微笑んで受け取った千代紙から、不器用でどこか暖かい永倉の優しさまで伝わるようで心が温もりを取り戻した気がする。
「んでな、ここをこうして・・・」
「あ、なるほど。そこが足になるんですね」
「そうそう、上手いじゃねぇか。んで、こっちを折ってだな」
空に浮かぶ月は中天を過ぎ、丑の刻辺り。
恐らく明日も市街の巡察や隊務に忙しいだろう永倉は、眠れない千鶴が蛙を綺麗に折れるまで付き合うつもりらしい。
迷惑を掛けていると解っていても、今はその心遣いを受け止めていたかった。
遣り場のない焦燥も、一人放っておかれる孤独も、快活に笑う男が消し去ってくれるような気がしたから。
「おお、上手い上手い」
なんとか折り上がった蛙を手に、嬉しそうに綻ぶ顔に千鶴の強張った心まで綻ぶ。
「ありがとうございます、永倉さん」
「いいっていいって、こん位で礼なんか言わねぇでくれ。俺も退屈だっただけだからよ」
土方や山南からは必要以上の接触を禁じられている筈だ。
なのに萎れる千鶴を見兼ねて声を掛け眠れるまで相手をしてくれているんだろう。
叱責されるだけならばいいがもしかしたら酷い罰を受けるかもしれない。
そう思うと申し訳なくなったがそれはこの男の望む処ではない気がした。
「でも、楽しかったですから、ありがとうございます」
だから精一杯の笑顔で感謝を述べる。
もう大丈夫だからと、安心させるように笑った千鶴は自分を眩しく見返す男を真っ直ぐ見つめて頭を下げた。
それはよかったと笑う男のおかげで、明日からはもう少し笑える気がしたから。














折形=現代で言う折り紙
当時、実際蛙の折り紙は存在しました。
鶴とかより面白いかな・・・と・・・w
ああ、ほのぼの過ぎる・・・
どこに甘い要素があったんだろう・・・遠い目



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