短編集

花咲き誇れ
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左之助の言葉に、酒が抜け切ってない俺の頭はなかなか稼動しちゃくれなかった。
そんな俺を凝視する二人に顔を顰めて目で問い掛ければ、同じく眉を顰める二人の様子に、次第に俺の鈍い思考回路が動き出す。


「や・・・べ・・・・。」


そう、今日は四月八日の花祭り。

折角の非番だからと土方さんから特別に外出許可を貰った千鶴を、神社の花祭りに連れて行ってやると随分前から約束していた。
昨日も花街に行く俺に、千鶴は不安そうな顔を向けていたのを思い出した。

「明日、お待ちしてますね?」

滅多にない外出許可に、これまた折角だからと近藤さんから着物を贈ってもらった千鶴。
初めて見る娘姿を楽しみにしながら、着物を預けてある呉服屋の近所の甘味屋で待ち合わせて祭りに行く事にしたんだった。
約束の時刻は午の刻、正午丁度。


「今って・・・。」
「申の刻、もうすぐ酉の刻だけどな。」
呆れたような左之助の言葉に、俺は顔面蒼白となって立ち上がると、まさに脱兎の如く走り出した。

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