短編集

出会い頭に咲く山桜
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此処最近、攘夷派の志士の動きが活発で、私はその情報収集の為に監察方である山崎君や島田君と遁走しています。
先日の捕物で負傷した左腕は傷自体は完治したモノの、最早武士としての働きは見込めない程度に動かなくなってしまいました。
落ち込まなかった訳ではないけれど、今は寧ろこの忙しさがそれを忘れさせてくれました。
そして、今夜も山崎君の報告を受け芳しくはないその内容に眉を顰めるしかありません。
「如何しますか、総長。」
「・・・総長、ですか。武士として使い物にならなくなった私が、いつまでその地位に居られるのでしょうね。」
「・・・山南さん・・・。」
「ああ、いえ。君にこんな事を言っても仕方ないですね。ご苦労様でした。今夜はもう休んで下さい。」
「・・・は。では、失礼します。」
音もなく山崎君が去った後、私は怠業に嘆息すると茶器を片付ける為に立ち上がった。
隊士のほとんどが寝静まった屯所内には、そよとも物音は聞こえず、ともすれば静寂の中の静寂、とも呼べる音が響く。
「私も歳なのでしょうか・・・。」
深夜の静寂が怖い、等と思ってしまった自分に少し顔を赤らめ若干足早に廊下を進む。
常であれば周囲の気配に敏感な私が、この時ばかりは既に皆寝静まっていると思い込んだ事。
そしてあまりの静けさに何とは無しに気が急いていたからか。
その気配に気付いた時には既に遅し。
暗い屯所の廊下の角を曲がった途端、小さくはない衝撃が私を襲いました。
「きゃぁっ!?」
胸元辺りに感じたそれは、急激過ぎて咄嗟に対処出来ず、意外な重量をも持っていた為にそれ毎後方へ倒れこむと言う失態を犯してしまった。
一体何が!?

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