1/1ページ目 「あ・・・切れちゃった・・・。」 いつも髪を結っている紐が、突然切れてしまった。 「古くなってたからなぁ。」 「何だ?髪紐切れたのか?俺予備持ってるから、それやるよ。切れたのは、捨てちゃえば?」 「ありがとう、平助君。でも、私も持ってるから、いいや。ちょっと、括ってくるね?」 「え〜?そっか〜?」 少し残念そうな平助君の声を背中に聞きながら、私は自室へと戻る。 本当は予備なんか持ってなかったけど、でも、この紐だけは捨てたくなかったから・・・。 「ん〜〜ちょっと、無理があるかなぁ?」 私は何とか切れた紐を結び合わせて髪を括ろうとするけれど、少し長さが足りないのか上手く結べない。 「何やってんだ、千鶴。」 そこへ原田さんがやってくる。さっき平助君達と一緒にいたと思うけど、後を追ってきてくれたのだろうか?そう思うと、少し嬉しかった。 「いえ・・・さすがに、切れた紐では結び難いなぁと・・・はは。」 「予備で結い直すんじゃなかったのか。」 「まぁ・・・そうなんですが・・・そうすると、この紐が捨てられちゃいそうで。」 「・・・そんな、大事な紐なのか?」 原田さんの声が驚く程近くで聞こえて、振り返ろうとすれば、後ろから抱き締められていた。 「もしかして、昔惚れた男から貰ったもん・・・とか?」 「あ・・・えっと・・・・はい。そう、です。」 どうせ隠しても無駄だろうし、私の昔の事なんか原田さんは気にもしないだろうと正直に話す事にする。 私の腰に回された腕に、少し力が篭ったのは気のせいだろうか? 「初恋、だったんです。多分。お隣の少し年上の男の子で、よく遊んでもらったけど、その分いじめられたりしてました。 けど、10歳位だったかなぁ。ご両親のお仕事の都合とかで、引っ越す事になって、最後の日に、これをくれたんです。」 「へぇ・・・・初恋、ねぇ?もしかして、そん時口付けでも交わした?いつか迎えに来るからとか。」 「いいえ!まさか!だって、10歳、ですよ?でも・・・額に、軽く・・・。」 「口付けられたと・・・。」 「はい・・・。」 もしかして、妬いてくれてる?まさか、そんな訳はないと被りを振ると、後ろに居た原田さんが急に前に回ってきて、私の目を覗き込む。 「は・・・原田さん?」 「それは、ちっとばかし妬けるなぁ。」 「え・・・。」 驚く間もなく、原田さんは私の額に口付けると、そのまま強く抱き締めてくれる。 「は、原田さん!?」 「出会ったのが俺のが遅かったのは仕方ねぇ。早いか遅いかってだけの違いだ。 けど、そいつからの贈り物を、後生大事に使ってんのは、妬ける。」 「だって・・・嬉しかったんです。初めて男の子から贈り物して貰って、自分が好きだった人が同じように好きでいてくれた事。 だから、これは初恋成就記念?みたいな物なんですよ。」 「初恋ねぇ・・・。」 「・・・怒りました?」 「い〜や、怒ってねぇけど、気分はよくねぇかな。」 「そういうの、怒ったって言うんじゃないんですか?」 「はは、違いねぇ。なぁ、千鶴?」 「何ですか?」 「そいつが初恋なら、俺は何番目だ?」 「え・・・?」 「お前が惚れた男は、俺で何番目だ。」 「そ、そんなの・・・2人目です・・・・。」 「何だ、少ねぇな。」 「何だって・・・何ですか?私そんなに惚れっぽくないです。」 「はは、そうだな、わりぃわりぃ。じゃあ・・・そうだな。」 原田さんは私を抱き上げて座り込むと、そのまま膝に私を乗せたまま笑みを零した。 「恋って、どんなのだ?」 「え!?こ、恋・・・ですか・・・。そうですね・・・。 傍に居ないとその人の事ばかり考えたり、傍に居ても、ドキドキしたり。笑顔を見ると嬉しくなったり・・・とか?」 「ふ〜ん、千鶴の初恋はそんな感じだった訳か?」 「は・・・はい。子供っぽい、ですよね。」 「い〜や、いいんじゃねぇの?じゃあ、俺は?俺と居ると、どんな感じするよ?」 「原田さんは・・・同じような感じですよ。凄くドキドキします。今も、してますし・・・。それに・・・。」 「傍に居たら、触れたくなって、もっと俺の事が知りたくなって?離れたくなくなる?」 「は、はい。」 私を見つめながらそんな事を言う原田さんは、凄く艶っぽいと言うか、色っぽい感じがして、私は全身が心臓になっちゃったんじゃって位ドキドキしていた。 なのに原田さんは潤まんだ瞳を伏せるように下から私を見上げてくるから、益々ドキドキが止まらなくて、とても・・・。 触れたくて仕方なかった。 私がそっと原田さんの頬に触れると、その手をぎゅっと握り締めて原田さんは笑う。 「そう言うのも、恋か?俺は、どっちかってぇと愛だと思うんだがな。」 「愛、ですか。」 「ああ、俺はお前を愛してるよ。これ以上ねぇって位、俺の全てでお前を求めてる。お前は?俺が欲しいとは思わねぇか?」 「ほ・・・欲しいって・・・!欲しいかどうか、判んないですけど、触れたい、とは思います。今とか、凄く。」 「んじゃ、遠慮せずに触れていいんだぜ?俺はお前のモンだし、お前は俺のモンだからな。 お前がそう思ってんなら、仕方ねぇから、許してやる。」 「え・・・何をですか?」 「初恋がその紐を贈った男なら、初めて愛した男が俺なんだろ?だったら許してやる。 これが最後の恋で、最初で最後の愛にする自信もあるしな。」 「そ・・・・そんなの・・・。」 「違うか?俺にとっては、お前が最後の女なんだが。」 「違わないです。原田さんが、最後の人です。」 「だろ?だから許してやる。その紐も、使ってていいぜ。」 「え!?いいんですか!?」 「ああ、その代わり・・・。」 原田さんはそう言いながら、自分の髪紐を解くとそれで切れた紐で括っていた上から、綺麗に結い上げてくれる。 「そいつへの想いに、俺への想いを上書きだ。」 な?と首を傾げて私に微笑む原田さんが、あんまり綺麗であんまり素敵だから、私は思い切り原田さんの首に抱き付いた。 「はい、きっとこれが最後の恋ですね。」 「そうだな。これからも、よろしくな?」 「はい!」 原田さんは素敵だから、きっと私は沢山ヤキモチを妬いて苦労するんだろうなって思いながら、彼からの優しくて暖かい口付けを受け止めていた。 〜オマケ〜 「そう言えば、原田さんの初恋っていつですか?」 「ああ〜?俺か?俺は・・・・。」 「もしかして、憶えてない?」 「いや〜。何か、近所のダチのおっかさんだった気がする・・・。」 「えっ!?」 「そういや、今までの女は皆年上だった気がするな〜。けど自分から惚れたのはお前だけだぜ?」 「は・・・はい・・。」 (実は原田さんって・・・) 熟女好き!!?? 何故自分を好きになってもらえたのか、今更ながら首を捻る千鶴でした。 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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