短編

酔いどれ迦陵頻迦〜総受け→ラスト左之助?〜
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千鶴が新撰組に身を置くようになって、半年が過ぎた頃日頃の隊士の働きを労う為に酒宴が開かれる事となった。
「よ〜〜し、皆、今日は無礼講だぁ。
思う存分!飲んで食ってくれ!。」
局長が乾杯の音頭を取り、酒宴の幕開けとなったが
皆はまだ気付かなかった。
これが悪夢の幕開けだと言う事に・・・。


「よ〜〜しゃ!それじゃ、いつもの行きますか!?」
程よく酔いの回った左之助が、いつもの腹芸を始める。
それを見て笑い転げる面々。
いつも冷静な斉藤や山崎さえ苦笑を浮かべて酒盃を煽る。
普段あまり見られない光景に、千鶴も酒が進み、少々呂律も怪しくなった頃・・・。
「そ〜だ!千鶴千鶴!」
興に乗った平助が、機嫌よく千鶴を手招きする。
「ん〜〜〜?なぁに?へ〜すけ君?」
頬を赤らめてにっこり笑いながら問い掛ける姿に、隊士の誰もが心中穏やかでなかった。
((((か・・・・っ可愛い!!))))
「あのさ、千鶴って、歌上手いじゃん?何か歌ってよ。」
そう言われれば、いつだったか千鶴が歌ったのは、なかなかの声で、
思わず聞き惚れるに充分だったなと、一同頷き、平助共々一曲所望する。
「え〜〜〜?歌〜〜?」
「うん、駄目?」
「ん〜〜恥ずかしいから・・・い〜や〜〜」
い〜や〜とか言いながら、何故かゴロゴロと転がって行く。
「おいおい千鶴ちゃん大丈夫かぁ?もう酒は止めとけって」
まだ呑み足りないと杯に手を伸ばす千鶴の腕を、新八が受け止めて、何故かそのまま自分の膝に乗せる。
「あぁ!!新八さん、何やってんだよ!」
それを見た平助が声を荒げ
「・・・・千鶴を一人占めにしようとは、いい度胸だ。」
斉藤は鍔を鳴らす。
「新八、てめぇ明日の鍛錬覚悟しとけよ?」
土方の目が怪しく光る。
左之助はと言えば呆れたような顔で一同を見回している。
青くなる新八を無視して、山崎が平助の後を継いで一曲進める。
「今日は無礼講の酒宴の席だ。少しばかり羽目を外しても平気だろう。」
うんうんと頷きあう皆を見て、千鶴もそれではと覚悟を決める。
「んじゃぁ、歌っちゃお〜かな?」
てへっ?と苦笑いする千鶴に、酒のせいばかりでなく昏倒しかける隊士続出。
「ゆきむらちづる!歌いまぁす。」
「ひゅ〜〜千鶴っちゃ〜ん」
「待ってました〜」
だみ声の飛び交う中、気持ち良さそうに歌い始める千鶴。
しかし・・・・。
「・・・・ち・・・ちづる・・・・?」
呆然としたように呟く土方。
いい加減酒も回り、視界もぶれ始めていた面々は、尽く倒れ付した。
呑み掛けた酒を、開いた口からダラダラ零す平助。
監察方である山崎・島田両名は、下手に鍛えた聴力が仇となり、顔面蒼白どころか痙攣を起こして身動き出来ないでいる。
青い顔で固まったままだった新八は、覚醒した途端に白目を向いて再び固まる(今度こそあの世へ旅立ったかもしれない)
そう・・・・。普段であれば、その歌声は鳥をも魅了する程澄んでいる。
んが!酒を呑んだ千鶴の歌はジ○イアンも裸足で逃げ出す下手さ加減なのだ!
いや、これは既に下手とか上手いとか言う次元ではない!
今、この日本で、最凶最悪の兵器であると言えよう!
その証拠に既に天国に一番近い位置にいた井上は、ほぼ昇天寸前。
誰も気付いていないが、外で様子を伺っていた風間・天霧・不知火の三名も意識は失わないまでも
戦闘意欲を失い千鶴を手に入れるのを止めようかとさえ考え出す始末!!
「・・・・なかなか・・・斬新な歌だな・・・。」
辛うじてそう呟いた斉藤は、さすがと言うべきか?
「・・・・一君、顔、蒼いよ・・・。」
「・・・・気のせいだ・・・。」
思いきり口元を抑え吐き気を逃そうとする姿が痛々しい。
周囲に死屍累々と屍の山を築きながらも、朗々と歌う千鶴は実に気持ち良さそうだ。
しかも、なかなか終わらない・・・。
「ってか、これって何番まであんの!?」
「ち・・・・千鶴・・・お前の歌は、お前の笑顔より強烈だぜ・・・。」
意味不明な言葉を残し、新八が事切れた。
「とにかく誰でもいいから千鶴を止めろ!」
我慢の限界となった土方が喚き出す。
「「「「無理!!」」」」
大音量で歌う千鶴は、存在自体が既に凶器!近寄るだけでも危険なのだ!!
そんな中、一人左之助だけが冷静に立ち上がり、何でもない事のように千鶴に近付く。
「うぉ!?危ないって左之さん!自殺行為だよ!」
「そうです、原田君、危険過ぎます。」
「左之・・・千鶴が疲れて眠るまで耐えた方がいい。」
皆非常に失礼な発言の連続だが、それでも左之助は気にしない。
「あ〜あ、ったく・・・。呑み過ぎだ。」
おら、と千鶴の頭を小突けば、歌を止められた千鶴はぷくっと頬を膨らます。
「ひど〜〜い!何で止めるのぉぉぉ??」
いや!ありがとう!左之助!君の勇気ある行動は我々にとってまさに救いだ!!
目を輝かせる周囲は無視状態で、左之は千鶴を肩に抱え上げる。
「何でじゃねぇ。呑み過ぎだ。もう寝るぞ。」
「む〜〜〜〜。」
まだ納得いかず不貞腐れた千鶴は、(歌はともかく)やはり最上級に可愛かった。
酔って桜色に染まった頬も愛らしい。
しかし、そこで何とか覚醒している土方、平助、斉藤がある事実に気付く。
「そういやぁ、何でおめぇは平気なんだ?左之助よ。」
「そうだよなぁ、新八さんなんか白目剥いちゃってるんだぜ?」
「・・・・。不可解だ。」
「あ〜?」
千鶴を抱えたまま部屋を出ようとしていた左之助は、なんでもない事のようにさらりと爆弾発言を落とした。
「酔った時と、寝ぼけてる時のコイツの歌にはもう慣れた。耳が麻痺しちまったからな。」
あ〜そうなんだ〜と納得しかける一同。
しかし、そこで平助が衝撃的事実に目を剥く。
「・・・!!??まぁ!!待て待て待て待て!左之さん待って!」
「なんだよ、平助。」
「酔った時って、左之さん千鶴とそんなしょっちゅう一緒に呑むんだ?」
「あぁ、まぁな。」
「寝ぼけてる時ってこたぁ、そんだけこいつと寝る時一緒って事か。」
「まぁ、そうゆうこった。」
「酔う時、寝ぼける時、すなわちそれは・・・。」
「ん?こいつ、ほとんど俺の部屋で寝てくぜ?」
その言葉に、そろって同時に口をパカッと開ける三人。
「んじゃ、俺らもう寝るわ、後よろしく。」
千鶴の歌にも辛うじて平静を繕っていた幹部三人。
その鉄の意志も、ここに脆くも崩れ去っていく。
固まったまま動けない三人は、それでもどこか冷静で、
あ〜今日も一緒に寝るんだなぁ、羨ましい〜〜
などと、羨望の眼差しで二人を見送る。
雪村千鶴。
彼女はよくも悪くも新選組に新たな風を吹き込んだ。



翌日〜
「ねぇ?原田さん。」
「ん?」
「私の気のせいかもしれないんですけど・・・。
何か、隊士の皆さん私の事避けてないですか?」
「んぁ〜〜・・・」
避けていると言うより、怯えてんだよ、とは
いくら左之助でも言えなかった。
「気のせいだろ。」
「そうかな。」
「気のせいだ。」
「そうです・・か?」
「気のせい気のせい。」
「かも、しれないですね。」
左之助に良いように言い含められ、全てを気のせいで済ます千鶴は、未だ自分が未知なる凶器を持ち得ているとは
気付かない・・・・。
そして新選組の恐怖は終わらない。

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