1/1ﾍﾟｰｼﾞ目 ある日の朝 「千鶴、千鶴」 「はい、何ですか？永倉さん」 「これ、やるな」 渡されたのは可愛い和菓子 「わぁ可愛い食べちゃうのが勿体ないですね」 （可愛いのはお前だぁ―――っ!!） 内心突っ込み鼻の下を伸ばしまくる新八。 それを見ていた左之助は、浅く溜息を吐きつつその場を後にした。 同じ日の午後。 「千鶴―」 「平助君。どうしたの」 「これ巡察の最中に見付けてさ、お前に似合うと思ったんだ」 渡されたのは橙色の小さな花束。 「わぁ綺麗ありがとう平助君部屋に飾らせてもらうね」 ニッコリ笑う千鶴に、 （お前を俺の部屋に飾らせてくれっ!!!） 鼻血を拭きそうな勢いでヘラリと笑う平助。 またもやそれを目撃した左之助は少々顔を曇らせ、朝より深いため息を吐き立ち去る。 その日の夕方。 鍛錬後。 「雪村君。」 庭掃除をしている千鶴を呼び止めるのは、監察方の山崎。 「ちょうど芋を頂いたのだが。」 「ホントですか?焚き火をして、焼き芋にしましょうか!寒いからきっと美味しいでしょうね」 （美味しそうなのは君だぁ―――!! 有らぬ妄想をして撃沈しそうになる山崎 たまたま通り掛かった左之助は、吐く溜息すら無くその場を去る。 その日の夜、土方へお茶を用意していると…。 「雪村君」 「あ、山南さん。今起きられたんですか?」 「ええ、起きてすぐに君の顔を見れるとは、今夜はいい夜になりそうですね」 「そ、そうですか…がお役に立てたなら、よかったです」 ニコリと微笑む山南に、背筋が冷や汗を伝う。どこか危険を感じ立ち去ろうとする千鶴に山南が追い討ちをかける。 「よければ・・・今夜はこのまま私と巡察に行きませんか。勿論、君の事は私がしっかり守らせてもらいますよ」 そろりと腰に手を回し手を取る山南。 「いぇ・・・私は・・・」 「ゴるぁ―――!!山南さぁ―――ん!!」 やんわりと断りの言葉を口にするより早く、何処かから飛んでくる怒号。 「えひぁっ!?永倉さん!!」 「何勝手に抜け駆けしてんだよ、新八っつぁんも山南さんも!千鶴、俺と鍛錬行こうぜ」 「あれ・・・平助君・・・」 「雪村君、珍しい蒔絵があるんだ。こちらで俺と観よう。」 「山崎さん、どこから」 次々と現れる隊士に千鶴はもう右往左往とオロオロし始めた。 「何を言ってるんですか。私が最初にお誘いしたんです。貴方達、後から割り込まないで下さい。」 「千鶴は明らかに迷惑がってんだろ～が」 「そうだそうだ千鶴は俺とのが楽しいってよ!年もちけぇし」 「永倉さん、藤堂さん、山南さん、幹部が揃って彼女に構えば彼女の立場が悪くなりますよ」 四者四様。 各々が好き勝手を言い出し、更にどうすればいいか判らなくなってくる。 「あの、皆さん、私・・・」 「「千鶴」」 「「雪村君」」 「ひぇいっ!?」 多重音声で一斉に名を呼ばれ焦って思わず変な声を出てしまった。 「「「「誰と一緒にいたい」」」」 ずずいと、詰め寄る4人。 「えぇと・・・私は・・・」 「こいつは俺といたいんだってよ」 ひょいっと後ろから抱えられ、気がつけばお姫様抱っこ状態。 「左之助さん?」 「「左之（さん）」」 「「原田さん（君）」」 ぎょっとして千鶴を取り返そうとしても、当の千鶴は頬を赤らめ得も言われぬ笑顔を零すものだから手が出せない。 「お、おめぇら・・・」 「まさか」 「信じたくはないが」 「その態度・・・」 「デキてんのか?」 さらりと爆弾発言をしたのはどこからか現れた土方歳三。 「副長不吉な事を言わないで下さい」 「そうだぜ、千鶴ちゃんは俺の女にするんだ」 「何言ってんだよ新八さん、千鶴は俺のだよ」 「三人とも、雪村君はいずれ私と共に歩む女性ですよ」 何を言っているんだとさり気無く柄に手を掛ける四人に対し。 「出来てるぜ」 これまた隠す事なくあっさり白状された内容は皆の脳天から色々飛び出させる威力十分。 「「「「まさか」」」」 「千鶴は俺の女になったんだよ、な」 「な」と囁きながら見せ付けるように千鶴の首筋に口付けた。 「ひゃんっ」 擽ったさに頬を染めて可愛い声を出す千鶴はそれでも嬉しそうだ。 「んじゃ、そう言う訳だから、お前らもうコイツにちょっかい出すなよ」 ちらりと冷ややかな眼差しを4人に向け 千鶴の首に耳に頬に口付けながら去っていく左之助と、残された羅刹化せずとも真っ白に燃え尽きつつある4人。 そんな4人を見た土方は深く深く溜め息を吐いた。 「明日っから、根性入れ直してやらねぇとなぁ・・・女にうつつ抜かしやぁって」 ふんっと苛立ちを隠せない土方が翌日から特に左之助に対する手合わせが容赦ないモノになった理由を知る者は 誰もいなかったりする・・・。 [指定ﾍﾟｰｼﾞを開く] ＜＜重要なお知らせ＞＞@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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