短編

相合傘〜涼風〜
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「あ〜じめじめ鬱陶しい〜!」
「鬱陶しいのはお前だ、新八。これで何度目だよ。」
「んな事言ったってよ左之!こう蒸し暑いと愚痴と汗しか出やしねぇぜ?」
「だからって、暑いだ蒸すだ言ってもどうしようもねぇだろ。」
全く、暑いなら暑いで黙ってりゃいいもんをうだうだと・・・。
聞いてるこっちが暑くならぁ。
俺はまだうだっている新八を無視し、自分の部屋へと向かう。
その途中、ちっこい頭がひょこひょこと玄関に向かうのが見えた。
(どこ行くんだ?)
気になる。
特別美人な訳でもねぇが、いつも一生懸命な直向さは見てて気持ちいい。
案外気に入っているその頭の主を追いかけ、門を出た所で呼び止めた。
「千鶴!」
「あれ?原田さん?」
「どこ行くんだ?」
「あ、永倉さん達が、あんまり暑くて辛そうなので、土方さんに氷を買う許可を頂いたんです。で、今から買いに。」
「わざわざ土方さんに頼んだのか!?お前が?」
「はい、ご迷惑、でしたか?」
「いいや、全然!むしろ助かる。新八のヤツ五月蝿くて敵わねぇからな。」
どうやら一人でお使いに行くつもりだった千鶴に強引にひっついて雨の中蛇腹を差して歩いた。
氷屋はこの暑さのせいか盛況で、若干待たされはしたがなんとか手に入れる事が出来た。
これも京都守護職って名前のおかげか?
ただ単に新選組の名にビビられただけな気もするな。
「あ・・・。」
「ん?どしたい?千鶴。」
小さく上がった声に下を見ると、両手に抱えた荷物で蛇腹を持てずにいる千鶴。
「ああ、俺が差してやるから、お前は・・・ってどんだけ持ってんだ?ちょっと俺に貸せ。」
「で、でもそうすると傘が・・・。あ、私が原田さんの傘も差してあげます!」
「駄目だ、女に傘持たせるなんて格好悪い真似が出来るか!」
「じゃ、じゃあ私がもっと氷を持つので・・・。」
「女に重たい荷物持たせて自分が楽するなんてもっと出来ねぇ相談だ。」
「え〜・・・?」
どっちにも譲らない俺に、千鶴が眉を下げて途方に暮れている。
右手に蛇腹、左手に氷。
あ、何だ、これでいいじゃねぇか。
「千鶴、こっち来い。」
不思議そうな顔をする千鶴の肩を抱き寄せ、広げた蛇腹の下に二人並んで入り込む。
ちょっと肩がはみ出るが、ずぶ濡れになるよりゃマシだろう。
「は、原田さん!?」
「こうすりゃ二人とも濡れねぇで済むし、お前に荷物持たせる事もねぇだろう?」
ぴったりくっついた体が恥ずかしいのか、赤く染まった頬を俯かせる様は意外にも可愛いなんて思っちまった。
俺にまで移りそうな熱は、脇に抱えた氷のおかげかそれほど不快じゃなかった。
「涼しいな。」
「そうですね、これなら永倉さんも少しは涼めますね。」
「ああ、やっと五月蝿いのが大人しくなるぜ。」
しとしと降り続く雨は鬱陶しいが、抱えた氷のおかげで涼しい風が俺達を包む。
結局、お互いの肩が濡れないように蛇腹を押し合いへし合いしたせいで、それぞれの肩はびしょ濡れになっちまったがそれも梅雨時なら仕方ねぇ。
長くもない道程を、ちっこい頭と一つ傘の下並んで歩くのは、案外気持ちいいもんだったからな。






*****
よしっ!
今度は相合傘してるな、うん(ほ・・・)
この時代に氷屋があったのかとか考えたら負けだ!
るろうな人達がカキ氷食ってたからあるんだよっ!
そういう事にしといて
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