1/2ページ目 いつもは平助や新八が入る時刻、共に入り背を流し合う左之助だったが、何故か今日に限って風呂に入る時間がズレた。 夜番での巡察のせいでもあるのだが、帰って来てすぐに新八に捕まり愚痴を聞かされた事が一番の原因かもしれない。 「新八もなぁ、真っ直ぐでいいヤツなんだけどな。」 は〜と深い溜息を吐きつつ脱衣所でサラシを解いていく。 バサッと上着を適当に放り投げ、木戸を開けるとポカポカと暖かな湯気が立ち上る室内に首を傾げる左之助。 「あぁ?誰か入ってたのか?温い風呂を覚悟したんだが・・・。」 ボソリと呟くと、奥で響く水音に再び眉を顰め首を傾げる。 「・・・?誰かいんのか?まさか間者・・・のわきゃねぇわな。」 最悪の事態を想定し、脱衣所に武器を取りに戻るべきか悩む左之助の耳にか細い声が届いた。 「は、原田さん、ですか?」 「っ!?んぁ!?その声、千鶴かっ!?」 「はい、あの・・・すみません・・・。まさかこの時間に何方かが入って来られるなんて・・・。」 「・・・まぁ、そうだわな。って、お前は何でこんな時間に・・・?」 「私は、いつも隊士の方と鉢合わせしないように、土方さんから言われて・・・。」 「ああ、なるほど、そりゃ知らなくて悪かったな。ビックリしたろ?」 「はい、驚きました。あ、すぐ出ますから!申し訳ありませんけど、ちょっと外で待って頂いていいですか?」 「いや、いいって。俺が出てくよ。お前はゆっくり浸かってな。疲れてんだろ?」 「そんな!原田さんの方がお疲れじゃないですか!」 「俺はいいんだよ。男だし、一日くれぇ入らなくたって平気だ。」 「駄目です駄目です!巡察から戻られたばかりなんでしょう?そんな時こそ熱いお風呂で疲れを癒して下さい。」 「そう言うお前だって毎日屯所の掃除やら洗濯やらでくたくただろう?その日の疲れはその日の内にだ。」 「原田さんは永倉さん達のお世話が大変じゃないですか!」 「お前は平助等の子守りまでやってんだろうが!」 「私より原田さんがっ!!」 「俺よりお前だっ!!」 「・・・こりゃ一体何の騒ぎだ。」 誰もが寝静まった夜中の騒動に、何事かと起きてきた幹部は風呂場の入り口と中で激しく口論を繰り広げる二人を見て呆気に取られる。 そうする内にも二人の言い合いは激しさを増していく。 「原田さんの方が大きいんだから疲れも沢山なんです!」 「ちっこいからこそ溜まる疲れも俺より多いんだよっ!」 「原田さんの意地っぱり!」 「千鶴が頑固なだけだろうが!」 ふぅふぅと肩で息をする左之助は、後ろから恐る恐る背を叩く相手を思い切り睨みつけながら振り返った。 「ああぁっ!!??」 「ちょっ・・・!!左之さん、俺俺!!平助だって!」 「・・・平助?と、お前等何やってんだ。」 「そりゃこっちのセリフだ。お前等こそ何やってんだ。」 「そうそう、真夜中に二人とも素っ裸で、何やってるの?」 「まさかとは思うが、左之・・・。」 「お前ら・・・今のこの状況見て何腐った事考えてんだ!どう見ても俺と千鶴は言い合いしてんだろうが!!」 「そうですよ!皆さんからも言って下さい!本当に原田さんって意地っぱりなんですよ!」 「俺よりお前のが頑固じゃねぇか!!」 「原田さんがっ!」 「お前がっ!」 「ちょっと待て!!」 更に続きそうな言い合いに土方の静止が入る。 「お前等の言い分はよ〜く判った。判ったがとりあえず二人とも着物を着て来い。」 「「あ。」」 ほけっと口を開く二人はどうやら自分達が素っ裸なのも忘れていたらしい。 慌てる二人を放って一先ず場を広間に移し、言い合い、もとい話し合い再開。 「で・・・?どっちがどっちだって?」 「だから、俺は千鶴が疲れてるだろうからゆっくり風呂に入らせてやろうと思ったんだよ。」 「私も、原田さんの方がお疲れだから、ゆっくりお風呂に浸かって頂こうと・・・。」 同じ内容で険悪になり始める二人に土方の仲裁、再び。 「要するに、お前等二人ともが意地っぱりなだけだろうが。おい、お前等もう部屋に戻るぞ!」 「え?土方さん、二人放っとくの?」 「土方さんも懐が深くなりましたねぇ?」 「ああ、でも確かに俺等がいる意味ねぇな。」 「・・・下らん。」 「て・・おい、お前ら・・・。」 「左之助!千鶴!後はてめぇらで勝手にやれ!但し!・・・次に俺の安眠を邪魔するようなら容赦しねぇからな。」 「「・・・・はい・・・。」」 眠りを妨げられた土方の超不機嫌な声音に、思わず顔を引き攣らせた二人は、ぞろぞろと部屋に戻っていく幹部を呆然と見送った。 「千鶴よ・・・。」 「はい、何ですか原田さん・・・。」 「寝るか・・・。」 「そうですね・・・。」 疲れを取る処か、逆にぐったり疲れた二人も風呂に入るでなく部屋へと戻っていった・・・。 →オマケ [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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