短編

山査子に想いを乗せて〜瑠胡様リク〜
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 夏も盛りが迫る頃、池田屋事件の煽りを受けて、活動が活発になってきた長州志士から京を守る為
新撰組は御所の警備へ参じる事となった。
今回はかなりの危険が伴うと言う事もあり、私は沖田さんと平助君と、屯所で留守番をする事になっていた。
明後日には御所へと向かう原田さんとも、当分逢う事は出来ないなと思いながら、久しぶりに巡察に同行していた。
「千鶴と巡察廻りも久しぶりだな?」
「そうですね、最近は沖田さんか平助君とご一緒する事が多かったですから。」
「だよな。俺とはちっとも同行してくれねぇから、寂しかったんだぜ?」
屈託ない笑顔を向けて気軽に肩を抱きながら、そんな事をさらりと言う原田さんに、私は内心かなり動揺しながらも
それを顔に出さないよう自分を抑えるのに必死だった。
「あはは、すみません。でも土方さんがいつも決められてるので、どっちみち私の希望は聞いて頂けませんよ。」
「あ、そうか。じゃあ土方さんの陰謀か、俺が千鶴とあんま一緒にいれねぇのは。」
「どうでしょうね?」
そんな軽口を叩きながら、あっと言う間に時は過ぎてしまう。
辺りは薄暗くなり始め、夜の帳が下りてくる。
「そろそろ戻るか、危ねぇしな。」
「はい。あ、でも・・・」
「ん?何だ、どっか行きてぇとこでもあったか。」
「はい。少しだけ、行って来ていいですか?すぐ追い付きますから。」
「馬鹿言ってんじゃねぇよ、こんな暗くなり出してんのにお前一人にさせられるか。」
「え、でも・・・どうしても今日じゃないと・・・。」
「判った、ちょっと待ってろ。
おい!俺は寄るとこがあるから、お前らだけ先に帰ってろ!」
原田さんは後ろの隊士の皆様に大きな声で告げると、私に向き直ってニッと笑う。
「んじゃ、行くか。俺も付いて行ってやるよ。そしたら何があっても守ってやれるからな。」
そう言うと、原田さんはさっさと行ってしまう。ありがたいけれど、申し訳なく思いながらも、知らず顔が綻ぶのも止められなかった。

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