1/2ページ目 ここ最近、薄雲が広がり雨か雪の天気が続いていた。 ・・・にも関わらず今日は朝から太陽が顔を覗かせ、冬とは思えない暖かな陽射しが燦々と降り注ぎ、冷たい木枯らしも形を顰めている。 となれば、新選組紅一点の雪村千鶴がやる事はただ一つ。 「よしっ!お洗濯、しちゃおう!」 じめじめとした天気のせいで洗濯物は溜まりに溜まっている。 ついでに布団の掛け布まで洗ってしまおうと千鶴は腕まくりして張り切りだす。 「まずは、皆さんの布団を集めて来なきゃ。」 意気込んだはいいがいきなり難関が目の前に! 原田や土方はともかく、永倉・藤堂の寝起きの悪さは凶悪極まり、沖田に関しては何をされるか恐ろしくて起こしに等いけない。 どうするか悩む千鶴の前に、いつも誰より早く起きて稽古を終えた斎藤に偶然廊下で出会った。 これ幸いとばかりに皆を起こしへ行くのに同行を頼むと、呆れたような声音が返って来る。 「俺が来なければお前だけで行くつもりだったのか?」 「はい。噂に聞く分には一人で行くのは少し無謀かとも思ったんですが・・・。」 幹部それぞれの寝起きの悪さをよく知る斎藤としては、居合わせて良かったと本気で胸を撫で下した。 どうやら千鶴は人伝に聞いて知ってはいても実際目の辺りにするのは初めてのようだった。 「覚悟は出来たか?行くぞ。」 「では・・・入ります・・・。」 ごくりと喉を鳴らして突入する最初の難関。二番隊組長永倉新八の私室。 襖を開けると、意外にも静かな寝息が聞こえてくる。 (意外〜絶対鼾とか凄いと思ったのに・・・) 「千鶴、気を抜くと痛い目に合うぞ。」 「え・・・?」 斎藤の言葉にきょとんと振り返る間もなく、地の底から這うようなキィキィと耳障りな音が聞こえてくる。 「こ、この音は一体!?っていうか・・・鳥肌立つんですけどぉ!?」 「新八は鼾はかかないのだが、何故だか破壊的に歯軋りが凄まじい。」 予め知っていたからか慣れているのか全身に鳥肌を立てる千鶴と違って斎藤は涼しい顔だ。 「斎藤さん!この異音の中で冷静でいられるなんて、さすがですっ!!」 「いや・・・。」 ふっと穏やかに笑って斎藤が差し出したのは、小さく丸めた綿。 「耳・・・栓・・・。」 「備え在れば憂いなしだ、千鶴。」 (っていうか・・・) そんな便利な物を用意するなら最初から教えて欲しかったと地に伏して脱力しつつ、綿を耳に詰め大音声で永倉を叩き起こすと、問答無用で布団と着物を引っぺがした。 「のわ〜〜!?何だ何だ!?何でいきなり素っ裸にされんだ!?」 「洗濯するので全部脱いで下さい!」 「全部って、ちょっ・・・千鶴!!褌まで外してくなっ!!止めて〜〜〜〜!!!」 「さぁ!斎藤さん、次行きましょう、次!」 朝早くから身包み剥がされた永倉。二本の腕で至る処を隠そうと必死な姿を後にし斎藤と千鶴は次の標的(?)へと向かう。 (下はともかく・・・何故上まで隠す必要が?) 斎藤の小さな疑問に気付かない千鶴は意気揚揚と藤堂の部屋の前に陣取る。 「斎藤さん、平助君は鼾や歯軋りはないですか?」 「ああ、平助は比較的大人しかった筈だ。鼾と歯軋りは。」 鼾と歯軋りは・・・? 斎藤の言葉に引っ掛かりを覚えつつ、今度は勢いよく襖を開け放った千鶴の目に、白く綺麗な足が飛び込んでくる。 いや、足と言わず胸と言わず何と言わず・・・。 「へ・・・平助君!何で何も着てないの!!?」 「鼾と歯軋りはないが、寝相が極悪だ。」 だからと言って何故ほぼ全裸なのか!? 意外に綺麗な足だの腹だのに目のやり場に困りながら散乱する着物をかき集めると、寝ているとばかり思っていた平助にいきなり布団に引きずり込まれる。 「へっ平助君!?起きてたの!?」 「う〜〜〜ん・・・千鶴〜〜。」 「・・・千鶴。寝惚けているだけだ。こちらへ・・・・。」 あくまで静かな声音にも関わらず発する気がそこはかとなく殺気を帯びていくのは気のせいか。 後で行くからと言われて斎藤を残しその場を去った千鶴だったが、微かに聞こえた悲鳴らしき音には敢えて先程の耳栓を活用。 「これぞ二段活用な有効利用ね!」 もう何が目的か判らないような、ぐっと握った拳をそのままに、次に向かうは最凶最悪一番隊組長の私室。 「大丈夫よ、あの人だって人間だもの。いくらなんでもお洗濯してあげようって女の子にそんな酷い事はしない筈!!・・・よね?」 自分に言い聞かせるように力強く頷くが、しかしその背中は小さく丸めたままこっそりと部屋へと侵入する。 (起こさなければいいのよ、起きてるから性質が悪いんだから・・・) 本当に当初の目的も忘れた様子の千鶴。布団と洗濯物を取りに来て、起こさずに済ませようと言う方が無理がある。 と、言うより一番隊組長に気付かれずに済むと思っている辺りに無理がある事に気付いた方がいいのではないだろうか。 「抜き足差し足どこに行くのかな?子猫ちゃん?」 [指定ページを開く] <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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