短編集

愛すべき呼称〜一ver〜
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たとえ雪が溶けても

溶けた雪が春になって

また君と

桜を見れるから・・・

ずっと

名前を呼び合おう





冬と言うには暖かく
春と言うにはまだ寒い
そんな朝の一コマ

「さいと〜さ〜ん、あっさですよ〜?」
珍しく起床の時間だと言うのに起きて来ない斉藤に
千鶴は必死で呼び掛け肩を揺する。
しかし本当に珍しくピクリともしない斉藤。
「斉藤さん?もしかしてお加減悪いですか?」
「加減は悪くはない。」
てっきり寝ているとばかり思っていたのに、急に返事が返ってきた事に千鶴は大きな目を更に大きくする。
「もう!起きてるなら、早く朝餉を食べて支度しないと、遅れてしまいますよ?」
「・・・・。」
ぷぅと頬を膨らます千鶴に、しかし斉藤は布団から出てこない。
「・・・もしかして・・・何か怒ってます?」
「怒っては、いない。」
・・・・怒ってはいない、と言う事は、拗ねている、と言う事か。
ここでやっと千鶴は斉藤との約束を思い出す。
「あ・・・。」
そしてまるで子供のように拗ねて布団から出てこない斉藤に破顔してしまう。
・・・・・・・・・名前で呼んでくれ・・・・・・・・・・・
共に過ごすようになって、まず最初に斉藤が口にした願いがそれだった。
しかし気恥ずかしさもあり、なかなか常には名前で呼ぶ事が出来ない。
昨夜就寝の挨拶をした時も、先程も苗字で呼んでしまった。
恐らくその為に拗ねてしまい布団から出てこないのだろう。
(子供・・・みたいだなぁ)
仕事や戦闘となると、驚くべき冷徹さを発揮する、元新選組三番組組長も
千鶴の前でだけはまるで幼子のようである。
(こういうとこ・・・好きだなぁ)
布団に包まる背中に愛しさが募り、千鶴は斉藤の肩口に身を屈める。
そして・・・・・

ちゅっ

小さく音を立ててその頬に口付ければ、驚いたように斉藤が起き上がる。
「やっと起きた〜」
にこ〜と笑って手を取ると、今度は斉藤が赤らんだ頬で俯いてしまう。
「千鶴は、ずるいな。」
「え?どうしてですか?」
「俺の願いはなかなか聞いてくれないくせに、自分の願いはこうして叶えていく。」
だからずるい、と拗ねているようだ。
「違いますよ。ずるいのは、一さんです。
そんな可愛い事行ってたら、お仕事行かせたくなくなっちゃうじゃないですか。」
千鶴までも頬を膨らませて拗ねてみせれば、今度は斉藤が目を瞬かせて破顔する。
「では、今日は・・・・」
そろりと腕を取られたかと思えば、そのまま布団の中に引きずり込まれる。
「は、一さん!?」
「そう、それが俺の名だ。今度から、間違えずに呼んでくれ。」
「うぅ・・・でも、恥ずかしいんですよ?」
「判っている。けれど、照れるお前も可愛い。」
「・・・・!!。」
真顔で息がかかるほど近くで囁かれれば、顔を上げていられない程真っ赤になってしまう。
「あ、一さん!早くしないと遅刻!!。」
「いや、今日はお前が可愛過ぎるから、俺は仕事に行けない。」
「え、えぇぇ〜〜?」
「今日はずっとこうしてお前を抱き締めていたい。いけないか?」
切なげな瞳に捕らえれてしまえば、もう千鶴も否やと言えない。
「・・・・今日だけ・・・ですよ?」
「あぁ、明日からは、昼だけは我慢する。」
一の一言に呆れたように笑いながらも千鶴は一の手を握る。
「起きたら、桜の蕾を見に行きましょうね。」
「そうだな。」
「一緒に手を繋いで、お散歩しましょう?」
「ああ。」
「ずっと、一緒に過ごしましょうね」
「一生・・・離れはしない。」
お互いの暖かな温もりを感じながら、春はまだ少し先の早朝。
仲良く手を繋ぎ眠る二人。

ずっと一緒に手を繋いで

ずっと一緒に桜を見ましょう

それぞれの名前を

愛しく呼び合いながら・・・・

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