短編

太陽の輪廻〜紅葉様 19000HIT キリリク〜
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二人肩を並べて昼寝を始めて半刻程。
千鶴より先に目が覚めた僕は、隣で眠る千鶴の寝顔を眺めていた。
口元に微かな笑みを浮かべ、穏やかに眠る愛しい人の柔らかい髪を一房掬い、どこか太陽の匂いのするそれに、そっと口付ける。
そのままさらさらと髪を撫でていると、千鶴が薄っすらと目を開ける。
「起こしちゃった?もう少し寝てても大丈夫だよ。」
小さくそう囁くと、にっこり微笑んで僕の名を呼んだ。
「総司さん・・・。」
「ん?」
「起きてらしたんですか。」
「うん、ついさっきね。寒くない?」
「そうですね・・・そろそろ風が冷えてきましたね。家に帰りましょうか。」
「そうだね。風邪引いちゃったら大変だし。」
お互いに誰が、とは言わない。
羅刹としての発作は、自分自身も千鶴もこの東北の地へ来て以来は形を顰めている。
だとすれば心配なのは、労咳に犯されたこの体。
この地の清浄な水と作物は、羅刹の発作に効くだけでなく、どうやら病に犯された身にも効くようで
最近は吐血する程の発作は起きていない。
これ以上良くなる事はないだろうが、それでも・・・数え切れない命を断ち切ってきた自分が、
今以上悪くならないよう祈ってしまうのは、罪な事なんだろうか。
愛しい人の笑顔を眺めながらそう思う。
ただ笑って彼女を見る僕に、訝しそうに眉を顰めて彼女は僕に問い掛ける。
「総司さん?どうかしました?」
「ん?・・・うん。どうして、最近は髪を結わないのかなぁと思って。」
「髪・・・ですか?」
「うん、僕、君の結い上げた髪が、結構好きだったんだよね。」
「そうだったんですか?初めて聞きましたよ。」
「そうだね〜僕も今気付いたかも・・・。」
「何ですか?それ・・・。」
呆れたように眉を下げて、それでも楽しそうに笑う君の肩を抱き、家路を辿りながら僕も笑う。
「きっと、結い上げた髪が出逢った頃の君を思い出すんだ。
くすぐったいような、恥ずかしいような記憶の中の君と、今僕の目の前で笑う君の
どちらも愛しくて、どちらも僕の宝物なんだ。
これから先、君は僕にどんな宝物を増やしてくれるのかな。
僕はいつまで、宝箱に君を増やしていけるのかな。」
「総司さん・・・」
僕が、心の中で自分に未来の無い事を諦めていると、彼女に伝わってしまっただろうか?
彼女は悲しそうに瞳を翳らせて、怯えたように僕の腕を掴む。
「ごめん、意地悪だったね。
けど・・・悔しいんだ。
いつか、僕は確実に君より先にいなくなる。
なのに、多分その後も時を過ごす君の全てを見る事は、僕には出来ないから・・・。」
本当なら、不安だらけの君に、もっと違う言葉を掛けるべきだって判ってたけど、
僕も本当は不安だったんだ。
お互い怖がる未来があるなら、分かち合えればそれも無くなるんじゃ無いかと思う。
だから敢えて不安を口にする僕に、けれど君は笑ってくれた。
「総司さん、もし、例え同じ時が過ごせなくなったとしても、きっと来世は、同じ時を過ごしましょう。」
きゅっと掴んだ腕に力を込めて、叶うかどうか判りはしない願いを口にする。
どこか泣きそうな君も、きっと不安だらけなんだろう。
でも今この瞬間だけでなく、例え死んで肉体が滅んでも、来世もまた巡り逢える事を約束してくれる君が
切ない位愛しくて、何にも替え難い程、大切だと改めて思う。

どれだけ時を重ねても、どれだけ輪廻を繰り返しても、私たちは必ず巡り合えるから、次の世も、そのまた次の世でも
ずっとずっと離れる事なく永遠に、二人で幸せな時を過ごしましょう。
そう言って笑う君は、僕が好きだと言った結い髪を揺らし
太陽の中で何よりも輝いている。その光は、あの頃暗闇しかなかった僕に挿した光と、ずっと変わる事はないんだろう。
永遠に・・・。
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