短編

晴れの日君に花束を〜風間vs沖田〜ちっち様リク
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今、私の頭は目の前で繰り広げられる現実に混乱し、困惑し、湧き上がる怒りに沸騰寸前だった。
目の前では、鬼の頭領である風間千景と新選組一番組組長である沖田総司が、殺気も露に対峙していた。
辺りに吹きすさぶ風は冷たく、遠く雷鳴まで聞こえそうな二人の間には、小さく竜巻まで渦巻いて見えそうだ。
「君も、案外しつこいね?」
「貴様程ではない。たかが犬風情が・・・」
散らされる火花は留まる事を知らず、傍に佇む千鶴にまで及びそうな勢いだ。
そうして千鶴は頭を抱える。
一体、何故こんな事に・・・私はただ屯所前に咲く花を手折ろうとしただけなのに・・・。


時を戻す事、約四半刻前。
門前を掃除していると、屯所前に咲く可愛いらしい小さな花に目が止まった。
私はそれを自室の部屋に飾ろうと、近付く。小さいとは言え、儚げな咲きようは、きっと殺風景な自室を鮮やかにしてくれると思われた。
そっと花の茎にそっと手を添えた時、いきなり後ろから声を掛けられた。
「いずれ俺の花嫁となる女が、そんな貧相な花に手を伸ばすな」
私は文字通り飛び上がって驚いた。
「か、風間さん!?どうしてこんなとこにいるんですか!?」
「歩いて来たに決まっている。」
いえ、どうやってって方法でなく、目的をお伺いしたいです・・・。
「我が花嫁のご機嫌伺いだ。千鶴、そろそろ俺の元へ来る気になったか?」
「なる訳ないじゃん、何言ってんの?」
「いっ!?」
風間さんの登場だけでも十分驚いたと言うのに、またもや背後から圧し掛かる重みと共に笑いを含んだ声が頭上から降って来た。
私って背中にスキが有り過ぎなのかな・・・。
「貴様・・・沖田とか言ったか。俺と千鶴の逢瀬を邪魔するな。」
「何が逢瀬だよ、ただ押し掛けてるだけでしょ。千鶴ちゃんは迷惑してるんだからさ、そろそろ察してもいいんじゃない。」
ね?と、可愛くこちらに振られても、目が笑ってないです、沖田さん!
こうして、私の中での二大危険人物が屯所前へ集結してしまった・・・。
この場をどう納めようかぐるぐる考えを巡らす私を尻目に、二人の争いの火蓋は切って下ろされてしまった(私の知らない間に)
「まずは千鶴から離れろ下種が、そいつはこれから俺と花を摘みに行くのだ」
いつそんな事が決まったんでしょうか、教えて欲しいです風間さん。
「花?それなら千鶴ちゃんにはこういう質素で可愛い花が似合うよね、どうせあんたの事だから、毒々しい花でも贈る気なんでしょ。」
それは私の見た目が質素って事ですか?
「ふ・・・馬鹿を言うな、我が妻にそんな貧相な花が似合う訳がないだろう。」
「じゃあ、あんたなら何の花を贈るのさ。」
「・・・芍薬、百合、牡丹・・・見目よく明るい花が似合うだろう。」
「はぁ!?芍薬に百合に牡丹!?何でそんなありきたりな訳?もっと捻ったのは出てこないの?っていうか、発想が貧困なんだよ。」
「貴様の目先の物で済まそうとするお手軽さよりはマシだと思うがな。」
ああ・・・誰か助けて下さい。っていうか私逃げていいですか?
「風間、それ位にしておかなければ、雪村君が困っている。」
「総司、お前も適当に切り上げねぇと、千鶴を困らせたい訳じゃねぇんだろ?」
「「当たり前」」「でしょ。」「だろう。」
わ〜〜こんな時だけキレイにハモルんだぁ。
「それに、雪村君には確かに百合や芍薬等よりもっと清楚な花が似合うのではないか?」
可憐な様が白い清楚な花を思い浮かばせるな。
「そうだよ!ま、この小さい花でも似合ってるとは思うけど!」
元が可愛いからな!
それぞれ思い思いの台詞を口にする。ありがとう二人とも!!凄く救われた気がするよ!!
私は思わず顔を輝かせて二人を見る。するとそれを見た風間さんと沖田さんの目がキラリと光る。
「平助君、僕の選択に何か文句でもあるの?」
「天霧・・・この俺に意見する気か?」
二人から一気に立ち上る殺気に平助君と天霧さんは押し黙ってしまう。
あぁ・・・救いの光が・・・。
「・・・・しまった。千姫に用事があったのを忘れていた。雪村君、急ですまないがこれで失礼する。」
「あぁっと忘れてた!俺も近藤さんに用事あったんだよ!しまったな〜。って事で、後でな!千鶴!」
「え!?二人とも行っちゃうの!?」
私が引き止める間もなく二人は風のように去って行く・・・・。この二人相手に、私一人でどうしろと・・・。
「さて、邪魔者が消えた処で、千鶴。」
「はいっ!?」
「そうそう、邪魔者が居なくなったとこでね、千鶴ちゃん。」
「お前は」「君は」「「どっちの花がいい?」」
「え・・・え・・と・・・。」
あくまでもにこやかな二人。けれど目の奥にある光は笑ってないです!全然笑ってないのに笑顔が怖いです!
もう、本当に誰か助けて下さいぃ!!
「風間〜お前いつになったら帰ってくんだよ?」
「総司、そろそろ夜の巡察の時間じゃねぇか?」
私が神にも仏にも祈りを捧げた瞬間、まさに救世主が現れたようです!
ああ、不知火さん原田さんお二人の後ろに後光が射して見えます〜。
「俺は今忙しい。用があるなら明日にしろ。」
「巡察なんて少し位遅れたって平気でしょ。何なら左之さん行って来てよ。」
「風間、お前なぁ・・・。」
「総司も、いい加減にしねぇと・・・。」
「て言うかさ、左之さん。」
「不知火・・・。」
「「五月蝿いんだよ、二人とも。」」
冷ややかな視線に射抜かれて、不知火さんと原田さんは手に手を取り合って去ってしまう。
「不知火、久しぶりに手合わせするか。」
「そ〜〜〜だな、原田。っていうか。」
((殺される前に逃げるぜ!))
お二人共、心の声が聞こえるようですよ。そして私は何故か涙で前が見えません・・・。
「さ、千鶴ちゃん?」
「千鶴、さっさとそいつに引導を渡してやれ。」
「何言ってんの?引導渡されるのはあんたでしょ?」
「ふ・・・身の程を知る事も必要だと思うがな・・・。」
チキっと、鍔を鳴らして更に殺気が深まり、辺りに吹きすさぶ風は冷たく、
遠く雷鳴まで聞こえそうな二人の間には、小さく竜巻まで渦巻いて見えそうだ。
「君も、案外しつこいね?」
「貴様程ではない。たかが犬風情が・・・」
散らされる火花は留まる事を知らず、傍に佇む千鶴にまで及びそうな勢いだ。
既に千鶴は諦めの極致となり、傍観を決め込んでいる。
私は石で道端の草で決して決してこの人達とは何の関係もありませ〜〜ん!!
千鶴が心の中でそう叫んだ時、ぽんっと肩を叩かれた。びくっと肩を震わせ振り向けば
そこにいたのはニコニコ笑う巡察帰りの井上さん。通称源さん。
「源さん、今お帰りですか?」
どこか父を思い出させる源さんは、私の唯一と言ってもいい癒しの人。今の状況でこの人に会えた事に、とても感謝致します!!
「おお、そういやね・・・。」
源さんはごそごそと袂を探って、出て来た物を私に渡してくれた。
「わ・・・可愛い!」
それは桃色の砂糖細工の花だった。とても精巧な作りで食べてしまうのが勿体ない位の可愛いお菓子と、一輪の向日葵。。
「これもさっき頂いたんだ。西洋の花らしいんだが、雪村君に似合うと思ってね。その菓子もあげるから、食べなさい。」
「ありがとうございます〜。さっそく頂きますね。
よかったら源さんも一緒に!」
「ああ、いいね、君とのお茶の時間は疲れた心も体も癒してくれるよ。」
「はい、じゃあ、行きましょうか」
私はそう言って源さんの腕を取り歩き出す。
・・・おっと・・・しまった忘れ物。
「風間さ〜ん、沖田さ〜ん。死なない程度に頑張って下さいね〜?じゃ、失礼しま〜す。」
未だ火花を散らす二人ににこやかに手を振りながら屯所に戻り、
源さんと和やかなお茶の時間を過ごした私は、あの後呆然と私を見送る二人がどうなったかなんて、さ〜〜っぱり
考えもせずに眠りに就きました。ああ・・・疲れた・・・。

〜オマケ〜
一方
残された二人
「君のせいで千鶴君が逃げちゃったじゃない。」
「貴様から滲み出る胡散臭い殺気に怯えたんだろう。」
「言うね、君も・・・。」
「貴様もな・・・。」
無言で睨みあう二人のせいで、その日門限までに屯所内に帰れなかった隊士が続出したとかしないとか・・・
真相は闇の中に消えていく運命だった。
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