短編

天つ童は地に降り立つ
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「どうして!!あんたなら!土方さんなら近藤さんを救う事が出来た筈だ!!」
「沖田さん・・・!!」
「土方さん!あんたがついていながら・・・!!」
「沖田さん!」
宇都宮城を攻撃され撤退を余儀なくされた近藤さん達は、近藤さん自身が囮になる形で土方さん達を逃がす事が出来た。
でも、それじゃあ近藤さんは?
近藤さんは、どうしたんだ?
「できなかったんだよ!俺だって、助けたかった、助けようとしたんだ!!」
近藤さんが斬首に処せられたと、語ったその口で助けたかったなんて言うんだ。 
あの人を・・・見捨てた人が!
「それでも近藤さんは死んだじゃないか」
怒りよりも何よりただ悔しかった。
僕は土方さんが嫌いだった。
たった一人、僕を理解しようとしてくれた人。
父のように兄のように僕を育ててくれた人。
その近藤さんが、信頼を寄せ認めた人。
土方さんと話す近藤さんは僕に見せるのとは違う顔で笑っていたから、だから僕も嫌いだったけど、認めずにいられなかった。
なのに、どうしてその土方さんがいながら近藤さんを置いて来てしまったんだろう。
どうして近藤さんが死ななくちゃいけなかったんだろう。
悔しくて悔しくて、思い切り殴り付けた。
殴った拳が痛くて涙が零れそうだった。
「く・・・!」
唇を噛み締めていないと、泣き出しそうだったから。
そのまま背を向けて立ち去ろうとしたのに、何故か僕の後ろに聞こえる足音。
「何してるのさ。君がついてなきゃいけないのは僕じゃないだろう」
「でも・・・沖田さんを、今一人にしてはいけない気がして・・・」
土方さんに詰め寄る僕を、必死に制止しようと割って入っていたこの子は、それでも僕が振り上げた拳を止めようとはしなかった。
小さな肩を縮めて、震えながら真っ直ぐ見返す。
役立たずで、身の程も知らない小さな女の子。
何時の間にか新選組に溶け込んで土方さんの心にまで入り込んだ女の子。
きっと近藤さんは、この子がいるから土方さんを残して行った。
誰にも理解されない鬼の副長を、この子なら理解し支えてくれると信じて。
「何、やってるのさ・・・」
小さな頃から誰にも理解なんかされなかった。
誰にも必要とされなかった。
近藤さんにさえ、剣で役に立つ以外どうやって傍にいていいか判らなかった。
それはあの人だって同じだと思ってたから、少しだけ近藤さんの傍に居てもいいと思ってたのに。
「君が支えなきゃいけないのはあの人だろう!何で僕なんかの傍にいるんだ!!」

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